企業は従業員の「人間教育」にカネを使え
――それにしても、GDPでは、人口が日本の3分の2のドイツに抜かれて4位に転落。実質賃金が20か月連続でマイナスを続けていることを思うと、日本経済に「株価4万円上昇」の底力があるという実感がわきません。
国民にその実感を持たせられるようにするには、どうしたらよいと思いますか。
熊野英生さん その気持ち、よくわかります。日本銀行の調査によると、株式・投信を行なっている人は、日本の人口のわずか15%程度ですから。
米国次第、他力本願の日本株上昇は、日本の現実だけをみると、明らかに過大評価です。私は、賃上げももちろん大事ですが、企業はもっと人間そのものにおカネをかけるべきだと思っています。
「人財」など、キレイごとの言葉を使わず、従業員の教育コストにたくさんおカネを使い、ビシビシ鍛えあげて能力開拓を進めるべきです。厚生労働省の資料によると、日本企業の社員の能力開発費はG7(先進7か国)の中で最下位、対GDP比で米国の20分の1、フランスの17分の1、英国の10分の1というお粗末さです。
株価の上昇ばかり喜んでいる場合ではないでしょう。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
熊野 英生(くまの・ひでお)
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト(担当:金融政策、財政政策、金融市場、経済統計)
1967年山口県生まれ。1990年横浜国立大学経済学部卒、日本銀行入行。同行調査統計局、情報サービス局を経て、2000年第一生命経済研究所入社。2011年4月より現職。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事。
著書に『インフレ課税と闘う!』(集英社)、『デジタル国家ウクライナはロシアに勝利するか?』(日経BP)、『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』(文藝春秋)など。