訴訟で係争中の飯島章太さんも子どもへの接し方に悩んでいた
児相での子どもへの接し方については、児相の一時保護所の元職員で、長時間労働など過酷な労働環境から精神疾患を発症し退職を余儀なくされたとして、県に対し未払賃金や慰謝料の支払いを求め提訴した飯島章太さん(30)にも、23年10月18日に話を聞いている。飯島さんは19年4月に入庁し、2回の療養休暇を経て、21年11月に退職した。
飯島さんは、一時保護所には細かい多くのルールがあったといい、職員はそれを守らせなければならなかったと明かす。例えば、サラダにドレッシングとマヨネーズ両方かけてはいけない、嫌いなものを泣いてでも完食させる、などだ。子どもの話をあまり聞かないようにという指導を受けることも多かったという。
「最初の方は、子どもの話を聞くようにしていました。上司から怒られることもあったのですが、こっそりと。でもだんだん自分自身の仕事も忙しくなってきて、(当初は)『このルールおかしいな』と思っていたのが全然思わなくなってくる自分に気づきました。ルールを課す側になっていたわけです。
ルールを守らない子には、職員として指導することがありました。でも子どもは一時保護されて、心から動揺しています。そこに職員が注意したり、怒ったりすることが子どもにとって良いことなのだろうかと、葛藤がありました。本当に必要なのはケアであって、子どもの傷を少しでも癒すことです。だからこそ、自分が何のために仕事をしているんだろうというのは、とても感じました」
県児童家庭課は24年1月31日のJ-CASTニュースの取材に対して、児相での子どもへの対応の指導について、「『子どもにやさしく接しない』や『子どもとの関係性を作らない』といった指導をしている事実はない。なお、子どもの性別や年齢等に配慮した、適切な関りをすることとしている」と回答した。
ルールについては「子どもが食事の際に必要以上に調味料をかけるなどの場合、注意を促すことがある。『嫌いなものを 泣いてでも完食させる』などのルールはない」という。
「一時保護所」の運用をめぐっては、過度に厳しいルールが運用されているとの指摘があるため、こども家庭庁が全国統一の基準を初めて設ける方向で調整している。同庁虐待防止対策課によると、24年4月1日に統一基準を施行予定、24年度中に国の基準に基づいて各自治体が条例を作り、運用するという流れだ。国と同様に定めなければいけない基準と、国の基準を参酌して自治体の状況によりある程度変化を加えられる基準とがあるが、「基本的には、国とほぼ同様の規定が各自治体の条例で作られていくようなイメージ」という。
(J-CASTニュース編集部 高橋佳奈)