「東京一極集中」が大きな話題となっている。総務省が2024年1月30日に発表した23年の「人口移動報告」によると、転入超過となった都道府県は東京のほか、神奈川、埼玉、千葉、大阪、滋賀、福岡の7都府県のみ。
東京の転入超過数は6万8285人で、2位の神奈川県の2万8606人、3位の埼玉県の2万4839人を大きく上回っている。残りの40都道府県は転出超過だ。しかしこれに「国外からの人口流入」を加えると、状況が変わってくるという指摘もある。
地方都市への外国人「人口流入超」の意外
東京都の転入超過数が前年比で1.8倍に増えたことについて、ブリヂストンや住友生命、ゆうちょ銀行で社外取締役を務める元日銀理事の山本謙三氏は2024年2月1日、ウェブサイト「金融経済イニシアティブ」に「『東京一極集中』論はいまや的を外している」と題するコラムを発表している。
このコラムによると、「東京一極集中論」は国内移動のみを切り取ったデータによるものにすぎず、各地にとって重要な真の社会移動は、これに「国外からの人口流出入を加えたもの」でなければならないという。
山本氏が「人口移動報告」をもとに国内、国外からの流入超合計を集計した「人口流出入状況」を作成したところ、国外からの流入超数が、国内への流入超数を上回るところが21道府県もあった。
政令指定都市に東京都区部を加えた「21大都市」で見た場合では、流出超過は広島市と北九州市のみで、他の19都市はすべて流入超過となっている。
人口流出に悩む神戸市を例にとると、日本人のマイナス3487人に対し、外国人はプラス4140人。差し引きで653人のプラスだ。同様に、新潟市、静岡市、浜松市、堺市、岡山市でも、日本人の流出超数を外国人の流入超数が上回っている。
山本氏は、国内の人口移動だけで「東京一極集中」論を振り回すのは的外れであり、外国人の流入を維持し、いかに共生社会を構築できるかが最も重要な課題と指摘している。
もっとも、国内に流入した外国人が定住に至るのかどうかまではコラムで触れられていないが、この分析に「うなずけるところは多い」と述べるのは、都内に本社を置くIT企業の人事担当者Aさんだ。
「日本の生産人口の減少を外国人で補わざるを得ない」
Aさんの会社では近年、人材獲得競争が激化する国内から視点を移し、就職難に悩む韓国人の新卒学生を積極的に採用しているという。
「ようするに、日本の生産人口の減少を外国人で補わざるを得ないということですよ。当社で採用している韓国の学生は、専門スキルはあるし意欲も高い。あとは当社で快適に住める場所を提供し、日本のビジネスマナーを教え、日本語の勉強をサポートするなどして、いかに定着してもらうかが課題ですね」
コロナ前の「東京一極集中」に戻ったという報道もあるが、Aさんの会社では「フルリモートも完全に定着し、地方在住者の採用も増えたので、決して戻っていない」とのこと。今後も都内に本社オフィスを置くものの、九州など地方拠点のほか、韓国などの海外拠点を含めて、多元的な採用と人材交流を図っていくという。