いまは京浜東北線のホームしかない、埼玉県川口市にあるJR東日本の川口駅に中距離電車・上野東京ラインのホームができるかどうかが、話題になっている。
東京圏のJRでは、主要な5方面のうち4方面が、通勤電車と中距離電車が別々の線路を走るという形態になっている。中央線方面のみが、複々線は23区をちょっと出たところで終わっており、特急と中央線快速が同じ線路を走る。
そこで、JR東日本各方面の、中距離電車停車駅について見てみよう。
充実の東海道・横須賀線方面
中距離電車が充実しているのは、なんといっても東海道・横須賀線方面ではないだろうか。東海道本線は東京駅を出ると、新橋・品川を経て、都県境を経て川崎・横浜と停車する。この間、横浜までは京浜東北線が並行して走っており、各駅停車列車はすべてそちらの路線にまかせている。
この区間での東海道本線の速達性はものすごいものがある。横浜を出た後も、戸塚・大船と停車、あとは各駅となる。
横須賀線は、東京~横浜間の大半で距離を置きながら走っているものの、並行する区間では東海道線と同じく、速達輸送に徹している。横浜を出たあと保土ヶ谷・東戸塚・戸塚と停車することで、通過する東海道線のフォローをしている。
当然ながら、中距離電車の途中にも駅がほしい、という声がある。蒲田エリアの在住者から以前聞いた話では、蒲蒲線計画が実現したのち、蒲田に中距離電車を停車させてほしいという考えも地域にはあるとのことだ。
遠近分離の徹底した宇都宮線・高崎線方面
上野東京ラインを北へ向かう、宇都宮線・高崎線方面は中距離電車と、通勤電車の分離が徹底している。中距離は上野東京ライン・湘南新宿ライン、短距離は京浜東北線・埼京線と完全に分かれている。
中距離電車は、さいたま新都心駅が上野東京ラインは停車、湘南新宿ラインはホームなしとなっているものの、東京・上野・尾久(あるいは新宿・池袋)、赤羽・浦和と停車し、大宮へと向かう。この間の京浜東北線のフォローが細かい。武蔵野線との接続駅である南浦和にも中距離電車は停車しない。
常磐線や総武線方面は?
常磐線は、緩行線と快速線(中距離電車)が並行するのは綾瀬からである。ただし綾瀬は常磐緩行線と東京メトロ千代田線の接続駅で、北千住で千代田線と快速線を乗り換えることができ、実質的には北千住から並行していると見ていい。その先は、松戸・柏・我孫子と停車する。天王台には緩行線も中距離電車も停車するものの、緩行線が利用できるのは一部の時間帯しかない。そして取手。
常磐線の中距離電車は、潔いほど主要駅にしか停車しない。武蔵野線との接続駅である新松戸にもホームがないほどだ。
総武線も見てみよう。錦糸町で緩行線と快速線(中距離電車)が合流し、快速線は新小岩・市川・船橋・津田沼・稲毛・千葉と停車する。その地域の主要駅のみと、はっきりしている。都営新宿線に接続する本八幡も、武蔵野線や東京メトロ東西線に乗り換えられる西船橋も通過してしまう。
中距離電車と通勤電車は分離された東京圏JR
東京圏のJRの大半では、中距離電車と近距離の通勤電車は完全に分かれている。それにより都心への距離のあるエリアからの速達性を高めている。
そこで埼玉県川口市の上野東京ラインホームである。川口市は川口駅を、市川駅や船橋駅、あるいは松戸駅や柏駅のようなポジションの駅にして、都市の力を強めたいという戦略があるのではないだろうか? ここまで挙げた中距離電車の停車駅と、川口駅のポジションを見るとそう考えざるを得ないのである。
(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。