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国の補助金制度が、ブラック企業を生む?

二瓶琢史さん
二瓶琢史さん

前川 ほんの今から70~80年前の戦後の時期は、自営業と家族従事者がサラリーマンより多かった。それが時を経て逆転して、いまや雇用されて働くことが常識として定着した。
 このパラダイムが再度変わるには、まだしばらくかかると腰を据えるしかないのでしょう。

二瓶さん 日本が戦後復興に向けて作った雇用制度が、とても上手くいき過ぎたのだと思います。だから、見事に高度経済成長を成し遂げた成功体験から抜けられない。社会を取り巻く環境が変わって、もう効果的ではなくなっているかもしれないのに、いまだ安住してしまっている。

前川 強烈な成功体験をしてきたため、まさにイノベーションのジレンマが起こっているということですね。

前川 思えば、日本企業にとっての正義は、雇用を守ること、と言われがちでした。
 私が営むFeelWorksは「人を大切に育て活かす社会創りへの貢献」を理念に掲げています。
 私は、前職のリクルート編集長時代も含めると30年以上、人材育成やキャリア支援に向き合い続けてきて、いま痛切に思うのは、社外でも通用するプロに育てることこそが人を本当に大切にすることではないか、ということです。
 しかし、なかなか大きな潮流に至りません。

谷田さん 今の働き方改革などを見ていると、現行の法律や制度は性悪説に基づいて作られているように思います。

前川 たしかに、真面目な個人から搾取しようとするブラック企業もありますからね。でも、その性悪説に立った仕組みが、結果としてやる気のある人、頑張りたい人のブレーキになっていることが悩ましい。
 これからの働きがいのある会社、社会は、どうすれば実現できるとお考えですか。

谷田さん 公正な競争環境をつくることが第一だと考えています。
 その中で、現行の日本国内の制度にも課題があるのではと感じています。
 たとえば、補助金制度。企業の中には、補助金を頼りにした経営を行っている場合があり、実情として、公正な競争が阻害されてしまっていると感じています。つまり、補助金に頼らない企業が補助金をもらっている企業に伍していこうとすれば、経費削減で人件費に手をつけざるをえない。だから、ブラック企業問題は、補助金制度の2次被害とも言えるのではないでしょうか。
 一方で、本当に助けなければならない企業が存在することもあるため、単純に補助金をカットすればよいというわけではありません。非常に難しい問題ですが、制度の見直しにより、きちんと働いた人や企業ほど報われる、働きがいのある社会に近づくことを願っています。

前川 コロナ禍に実施された実質無利子・無担保のゼロゼロ融資の弊害も、この構造に似ていますね。
 補助金のおかげで生き延びている企業とともに、国の複雑な手続きを代行して補助金のおこぼれを狙う企業も増殖しますしね。これらは、社会に価値を提供しているとは言い難い。
 非常時に緊急セーフティネットは必要ですが、過保護になると公正な競争がないことから、「もらうのが当たり前」「努力しなくてもOK」の企業が生まれ続けてしまうことでしょう。
 苦難に陥る企業や人を支える税の使い方が、頑張る社員に報いる仕組みづくりの阻害につながっている可能性にも目を向けて、国全体で改善していきたいですね。

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