子育てに専念か、キャリアへの影響の心配か
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――ここにきて、厚生労働省が「保育園の落選ねらい」阻止のために給付延長申請を厳格化する方針だというニュースが、働くママに動揺を与えています。「異次元の育児支援に逆行するのでは」と違和感を抱く人もいますが、背景には何があると思いますか。
川上敬太郎さん 政府としては、決して育休を2年取得することを否定したいわけではないのだと思います。ただ、育休の主旨としては原則1年であること、落選することを期待してあえて倍率の高い保育園に申し込む、いわゆる落選狙いは望ましい手法ではないことなどをしっかりと示したいという意図があるのではないでしょうか。
――しゅふJOB総研の2019年調査と今回(2024年)の調査を比較すると、育休を2年まで延長したい人が56%から62%(子どもがいる人は65%)増えています。
すでに、多くの働くママには「子育て社員には、最長2歳までに育休支援」がインプットされており、「改めてそうではないのか?」とショックを受けたとの意見も聞かれます。
川上敬太郎さん かつて、まだ育休を2年まで延長して取得できるようにするかどうかを検討していたころに調査した際も、すでに賛成の声のほうが多く聞かれました。賛成する主婦層の意見として多かったのは、子育てにその分専念できるという声です。
一方、延長に反対する意見としては、キャリアへの影響を懸念する声が多く見られました。その後、実際に育休が2年まで延長できるようになり、実際に取得する人が出てくるようになるにつれて、キャリアへの懸念より子育てに専念できることのメリットを実感する人のほうが徐々に多くなってきたということなのかもしれません。
いまも育休の延長は不要とする声もありますが、多くの人たちが育休の2年取得を受け入れていると感じます。
――2019年調査と今回調査を比較すると、「本当に保育所に入りたい人に迷惑をかけている」という項目と、「育休延長のためには致し方ない」という項目がともに減少しています。
これは、落選ねらいを批判する意見と、擁護する意見がともに減っており、矛盾する回答にみえますが、どういうことでしょうか。
川上敬太郎さん 落選ねらいという行為自体は望ましい手法ではないという認識がある一方で、育休期間を延長するためにはほかに方法がないというジレンマは、以前からずっと存在しています。
ただ、落選ねらいをめぐって「本当に保育所に入りたい人に迷惑をかけている」と「育休延長のためには致し方ない」との相反する項目がいずれも減少したのは、落選ねらいが個人の悪意というよりも、ルールが引き起こしている不可抗力だと認識する人が増えたということのように思います。
実際、今回調査で「落選しなければ、育休延長ができないルールが問題」とする意見が若干増加しているのは、その表われのように感じます。