日本版ライドシェアが国交省から公表された。その内容は、既に2024年1月にタクシー業界と国交省ではすりあわせが終わっており、今回パブリックコメントに付されたが、これは出来レースだ。
ライドシェアが需給調整に便利な手段であるメリットを発揮できない
その内容も吹き出しものだ。ライドシェアといいながら、タクシー会社以外の新規事業者参入はない。しかも、現行のタクシー会社に許可されている範囲内(地域・台数)で運用するというので、あ然とする。その上で「発着地いずれかがタクシー事業者の営業区域内に存すること」というのは、その地域にタクシーがいないのでライドシェアを頼みたいのに、その地域のタクシー会社枠は一杯なのでライドシェアは使えない。結局、帰るところのライドシェアを頼むと、わざわざ帰るところから迎えに来てもらうので時間がかかって役に立たないだろう。こんな運用方法では、ライドシェアが需給調整に便利な手段であるメリットを発揮できない。
そもそも、タクシー業界の狙いは、(1)ライドシェアによる新規参入阻止、(2)技能実習による外国人ドライバーによる低コスト化だった。業界ロビイングにより、(1)については、上述のとおりライドシェアの主体はタクシー会社だけ、しかもがんじがらめの規制なので参入阻止に成功した。(2)についても、特定技能1号で外国人タクシードライバー確保可能という結果になったので、これもタクシー業界の勝利だ。というか、タクシー業界に今でも一部いる外国人ドライバーの低コスト化のために(2)が本命で、そのために(1)を主張してきたフシもある。(1)について新規参入させると犯罪率が高まるという、元々犯罪率の高い海外事例などの的外れ資料を揃えてきた。まあ、何とも言いようのない政策になったものだ。
自動運転タクシー普及までの「中期的なつなぎ措置」に位置付ける
遠くない将来、タクシーは自動運転になるだろう。それまでの中期的なつなぎ措置で、タクシー不足を解消すればいい。地域の公共交通として、バスの自動運転はすぐにでもとりかかるといい。
まず、(2)について、これはやめるべきだ。技能実習制度の大きな問題をさらに拡大することになる。(1)について、あまり知られていないが、今でも地域限定のライドシェアはある。それは一種免許ドライバーで可能だ。これを全国展開すればいい。必要なら日本人ドライバー限定でもいい。ライドシェアのほうが、事前にドライバーを選択できるなどの犯罪防止面でもメリットが大きい。今であれば、会社をリタイアした世代で、ライドシェアできる人は地域には多いだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。