タニタの「社員の個人事業主化」導入7年 「人が採れない、離職者が出て困る」悩む会社はトライすべき【インタビュー】

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安定した報酬を保障する手厚い仕組みが、逆に自立の妨げに?

谷田千里さん、二瓶琢史さんに質問を重ねる前川孝雄
谷田千里さん、二瓶琢史さんに質問を重ねる前川孝雄
二瓶さん 最近は、思ったほどには自立や自走が進まない傾向が目に付くようにも感じています。社員時代から継続する基本業務と報酬があることで、今までどおりの仕事でも収入は変わらない。すると、雇用されている社員とあまり意識が変わらない。
 弊社の書籍『タニタの働き方革命』(日経BP)の帯にも「会社員とフリーランスのいいとこ取り」と書きましたが、その負の部分もあるわけです。

前川 私が営む会社でも社員の個人事業主化と業務委託契約を推進していますけれど、御社の「プロジェクト」はかなり手厚い仕組みですね。
 本来、個人事業主は頑張って成果を出せば、相応の報酬を得られる。その一方、仕事で成果を出せなければ報酬も得られない。そうしたリスクを取っているがゆえに、自主裁量の幅も大きいわけですが。

谷田さん もともと会社の経費削減や雇用調整でなく、社員の自立へのトレーニングを目的に入れた仕組みです。
 基本業務と固定報酬がないと、安心して仕事ができないだろうと考えて、仕組みを設計しました。しかし、その配慮が「雇われ意識」から抜けきれず、かえって自立を阻害する原因にもなっているのです。
 改善すべき課題は、基本業務の部分にも歩合制を入れることだと考えています。
 実は、正社員の給与についても、歩合制の要素を導入したいと考えています。やはり、よりしっかり働いている人には相応に給料を増やし、平均以下の人の給料は減らす。また、頑張っている人から早く昇進できるようにする。やってもやらなくても同じでは、組織が活性化しませんから。

前川 私は大学でも教鞭を執り続けているのですが、優秀な若い人たちほどキャリア意識が強くなっていると感じています。
 当然、終身雇用も信じていません。退職金含め年功制の後払い給与など待ちきれず、働いた分だけ今しっかり稼ぎたいと考えています。だから、退職金のないスタートアップ企業や外資系企業に転じる若者が出てきているわけです。
 公務員や大企業で新卒採用難や早期離職が深刻化する背景には、自分たちの成長が実感できない「ぬるいホワイト企業」が敬遠され始めたことがあります。御社の改善方針は、そうしたニーズにも応えるものになりそうですね。

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