タニタの「社員の個人事業主化」導入7年 「人が採れない、離職者が出て困る」悩む会社はトライすべき【インタビュー】

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独立して個人事業主を選ぶ人は、全体の2割程度

写真左から、二瓶琢史さん、谷田千里さん、前川孝雄
写真左から、二瓶琢史さん、谷田千里さん、前川孝雄

前川 「プロジェクト」で個人事業主になった社員は、2017年の開始から7年間で何人になり、対象社員中の何割にあたりますか。また、今後増える見通しはあるのでしょうか。

二瓶さん これまで社員からプロジェクトメンバーに移行した累計人数は34人。うち6人がその後契約を終了していて、2023年末現在で28人という状況です。
 グループ全体の社員数は約1200人ですが、「プロジェクト」の対象となる社員はタニタ本社に所属する約200人です。これからは、さほど増えないと思っています。対象の2割程度というところでしょうか。

前川 2割というのはそれなりのシェアで、社内で一定の影響力を持つ数だと思います。波及してさらに増えてもよさそうに感じますが、これ以上あまり増えないと見立てているはなぜですか。

谷田さん パレートの法則――すなわち組織をけん引する人材は2割、に沿う結果です。
 やはり、雇用されている安心感、常に一定の給与が得られる環境を手放せないのではないかと推察しています。安定がずっと続くとは言い切れない世の中ですが、今でもこの考え方は根強いかもしれないですね。

前川 なるほど。人は変化を望まず、安定を求める傾向がありますからね。
 もう1つ、異なる視点からの質問です。これだけ変化が激しい時代、天変地異も続発しています。急な戦略変更や新規案件など、事業の急転換を図りたい場面も出てくるでしょう。
 その場合、無期雇用で役割も曖昧な社員に比べ、委託業務を明確に定めている個人事業主では、臨機応変にチェンシジマネジメントのドライブをかけにくいという課題はありませんか。

谷田さん それはあまり感じませんね。会社として新たな方針で行きたいという時には、基本業務の範囲で対応可能なものは説明して依頼しますし、全く新たな仕事は追加業務として契約しますので。

前川 なるほど。新たな業務も追加業務として、報酬含め納得して受けてもらえばよいわけですね。

二瓶さん 従来の雇用関係なら会社の方針が変われば「これをやって」と命令し、本人は気持ちが沿わなくても受けざるを得ない。
 一方、業務委託契約であれば、受けない自由があります。だから、会社側としては新たな仕事についてはより丁寧に説明して、腹落ちしてもらう必要が出てきますね。複数社の仕事を受けていれば、なおさら丁寧な対応が必要となります。
 実際は、業務に対して相応の報酬も支払っていますから、他での仕事をせずにタニタの仕事だけにフルコミットで専念してもらっても十分だという思いはあります。ただ、その部分が強く出過ぎると良し悪しがあり、そこは課題でもありますね。

前川 個人事業主になっても、タニタの仕事しかしていなければ社員との違いが出にくく、選び選ばれる会社と個人の対等な関係性になりにくい側面もあるわけですね。

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