「もしトラ」でも、政治に左右されない米国企業のパワー
――米国経済次第ということですね。しかし、米国経済に今後も期待して大丈夫でしょうか。今年(2024年)後半に景気減速が取りざたされていますし、11月の大統領選挙でトランプ氏が再び返り咲く「もしトラ」も、世界経済にとって気がかりです。そのあたり、どう考えていますか。
熊紫云さん 「もしトラ」が現実となれば、トランプ政権が競争制限的な措置をとったり、特に中国に対する強硬路線から中国経済への悪影響が強く出たりと、一定の影響はありますが、長期的には、米国企業の競争力は維持されるものと考えています。米国自体と米国企業は別のものと考えるほうがよいと思います。
たとえば、リポートで取り上げた「S&P500」を詳しく見ると、時価総額が最も高い企業には、マイクロソフト、アップル、アルファベット(グーグル親会社)、アマゾン、エヌビディア、メタ、テスラなどの巨大IT企業や先端技術関連の企業が多く含まれています。
このように、米国市場は大きく、人工知能、半導体などの業種で、技術革新とイノベーションを繰り返しており、持続的な成長が期待できると思います。世界の企業に与えるイノベーションはもちろんのこと、これらの企業は、世界中の人々の生活に欠かせないサービスを提供し、その価値を市場に示しています。
たとえば、マイクロソフト社提供のOfficeは多くの会社の日常業務に欠かせないアプリですし、Windows、グーグルの検索機能、およびスマホ向けのOSであるAndroidとIOS、EC大手のアマゾンなどは、多くの人々にとってなくてはならない存在となっています。
最近、マイクロソフト社の時価総額は一時400兆円を超えました。ちなみに、2022年度の日本の実質GDPが552兆円ですので、そのスケールの大きさが分かります。
以上の理由から、少なくとも今後5年や10年ぐらいは、米国企業に代わる存在がそう簡単に現れることがないと考えています。「もしトラ」など政治からの影響があるとは思いますが、米国企業の圧倒的な競争力が十分強いと考えております。