タニタの「社員の個人事業主化」ねらいは 優秀な社員の離職を防ぎ、報酬も増える「切り札」だった【インタビュー】

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   健康計測機器メーカーのタニタでは2017年から、社員が個人事業主化を選択できる仕組み(「日本活性化プロジェクト」)を取り入れている。

   個人と組織が互いに対等な関係で貢献し合う、第三の働き方、会社経営に挑戦してきたタニタ。社員の自律的なキャリア形成を促進しつつ自立を目指し、会社としての創造性やイノベーション力の向上を目指す取り組みへの注目度は高い。

   人材育成支援を手掛ける、株式会社FeelWorks代表の前川孝雄さんが、タニタの「日本活性化プロジェクト」実施の経緯やその成果、今後の展望と課題などについて、深く話を聞いた。

(《お話し》谷田 千里さん(株式会社タニタ 代表取締役社長) 二瓶 琢史さん(株式会社タニタ 経営企画部 社長補佐) 《聴き手》前川 孝雄(株式会社FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

  • 写真左から、タニタ代表取締役社長・谷田千里さん、前川孝雄、タニタ経営企画部社長補佐・二瓶琢史さん
    写真左から、タニタ代表取締役社長・谷田千里さん、前川孝雄、タニタ経営企画部社長補佐・二瓶琢史さん
  • 【企業プロフィール】株式会社タニタ
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  • 写真左から、タニタ代表取締役社長・谷田千里さん、前川孝雄、タニタ経営企画部社長補佐・二瓶琢史さん
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必死の立て直しが、ブレークスルーにつながった

前川孝雄 終身雇用、年功序列を土台とする日本型雇用の限界が指摘される現代。働き方は、いわゆるメンバーシップ型からジョブ型への流れが強まりつつあります。
 国は人材の流動化にも本腰を入れ始めています。しかし、私は単にジョブ型への転換だけでは、社員を育て活かし組織エンゲージメントを高めつつ、企業価値を向上させることは困難と考えています。
 そうしたなかで、タニタでは「日本活性化プロジェクト」を開始し、注目されています。思えば御社は、経営基本方針の筆頭に「私たちは変化を是とし、変化を讃え主導する集団であり続けます。」を掲げられて、革新や創造にチャレンジし続けてこられたのではないしょうか。
 そこでまずは、御社の経営理念やビジョン、ミッションなどから、さまざまなヒット事業につなげた経営のポイントを教えてください。


タニタのビジョン・ミッション・スローガン
谷田千里さん 実は、現在のビジョンやミッションは、私が社長に就任した後、経営がある程度安定してから作ったものです。
「『はかる』を通して世界の人々の健康づくりに貢献していく」という理念は、先代から引き継いだものです。しかし、ビジョンやミッションを先に作って、それが商品につながったという整然とした流れではなかったんですよ。

前川 先にヒット商品が走ったということですね。

谷田さん そのヒット商品も、しっかりねらってつくってきたたわけではないのです。
 私の社長就任時、会社は経営不振で、とにかく止血をして立て直さなければなりませんでした。引き継いだのが体組成計、血圧計、歩数計、尿糖計を組み合わせた計測機器と、これを使ったサービスを提供し、収集データを解析する子会社。機器は使い勝手が悪く、1セットで十数万円と高額で全く売れず、子会社も開店休業状態でした。
 周囲からは、商品も子会社も早く清算してくれと言われました。でも私は、ビジネスとしては将来性があると思いました。

前川 当時はそのような状況だったのですね。

谷田さん そこで、全社員に機器を配り、使ってもらうことにしました。すると、「使いづらい」という声が上がってくる。では商品改良につなげようと、協力を求めました。機器を使っているうちに、社員の歩数が増え、体重が減り、体脂肪率が下がる傾向が見えてきた。
 その時、ふと「これは医療費も下がっているのでは」と考えたのです。所属健保に問い合わせると、やっぱり医療費が減少していました。ちょうど東京・丸の内に「丸の内タニタ食堂」をオープンする少し前のことです。当時、NHKの「サラリーマンNEO」という番組の「世界の社食から」というコーナーでタニタ本社の社員食堂が紹介され、これをきっかけにレシピ本出版の話がきました。いいPR機会だと応じたところ話題になり、厚生労働省からも健康経営に関する取り組みの優秀例として取材を受けることになりました。
 そこで、さきほどお話した社員の計測値と医療費の相関を図表化したレポートをお見せしたところ、2012年(平成24年度)版の厚生労働白書で紹介していただくことになりました。これによって、大きな反響をいただきました。
 こうして社会のニーズがわかり、BtoCからBtoBの事業に切り替えて、医療費を適正化できる集団向けの健康づくりパッケージとして販売したところ、黒字に転換したというわけです。

前川 外から見ていると、戦略的にヒット商品を次々と出されたように見えますが、必死で経営を立て直そうと七転八倒した結果、ブレークスルーに至られたのですね。

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