物流の在り方を大きく変えると予想されている「2024年問題」。4月1日から自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間以下に制限されるため、荷物の配達などに影響が出ると懸念されている。
これまで、メディアではトラックドライバーの不足や、規制強化によって物流がどのように変化するかを論じるケースが多かった。J-CASTニュースBizは、トラックの配車業務という面から2024年問題に迫った。
同じ荷物であっても運賃が2倍
取材したのは、全国規模の物流会社の配車部門に勤務するAさん。物流会社には自社のトラックがある一方、個人事業主のドライバーが運転するトラックに業務委託することも一般的だという。Aさんは個人事業主のドライバーに仕事を依頼する業務が専門で、ドライバーへの報酬額はその都度、個人事業主と交渉の上で決まると明かす。
Aさんは「2024年問題」で、仕事の進め方に大きな変化があるのではと予想する。まず挙げたのが、1日に荷物を運べる距離の減少だ。
「1日の労働時間は、残業を入れても原則13時間以内になります。目いっぱいトラックを走らせても、『大阪~青森間だと、あと1歩のところで制限時間になり、1日では到着しない』といった例が頻発するでしょう。ここで物流会社側は、『ドライバーを2日働かせても利益が残るか』という問題が発生します」
ドライバーが2日稼働すれば、当然、支払う運賃が値上がりする。
「極端な話、同じ荷物でも運賃が2倍になってもおかしくありません。そうなると、荷主が嫌がるのではないかと懸念しています。私は、荷主の多くに『1日に荷物を運べる距離の減少』への理解が浸透してはいないのでは、という思いでみています」
結果、運賃の値上げに応じる荷主が少なく、低い値上げ率であっても物流会社側が仕事を受けざるを得ない状況になってしまわないか気がかりとAさん。利幅がなくなれば、配車業務が成り立たなくなってしまう恐れがある。
と、懸念を語った。
1つの便にトラックとドライバーが2組必要
変化は運賃だけにとどまらないと、Aさんは続ける。
「同じドライバーを2日働かせないのであれば、中継地点を設けて荷物を別のドライバーに任せる『ドッキング』という手法を使うことになります。先の説明通り、ドライバーへの報酬額はその都度の交渉によって決まります。中継地点に来ることが出来て、かつ、低額で残りの距離を走ってくれるドライバーが見つかれば、ドライバーへの支払い総額の大幅な上昇を防げる可能性はあります」
ドライバーの報酬の新しい相場は、「2日拘束」か「ドッキング」か、もまれた上で収れんしていくのではないかとAさん。それでも心配事は尽きない。
「ドッキングの場合には1つの便に対し、トラックとドライバーは2組必要なので、今度はトラックと運転手がひっ迫します。当然、配車の難易度が上がります。(ドッキングの方が経費を抑えられるなら)物流他社も同じ手法をとりますから、競争が激しくなった結果、トラックとドライバーが確保できなくなり、非常に危惧しています」
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)