小学館の編集者声明は、会社への「反乱」だったのか 現場と経営の「力関係」

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   日本テレビ系のドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さん(享年50歳)が亡くなった問題で、原作を手がけた小学館の編集者らが異例の声明を出したことについて、編集者が会社の方針とは別に声を上げたと漫画家が内情を明かして話題になっている。

   事実関係ははっきりしないが、出版社では人事に意見を言えるほど労働組合の力が強いともされる。今後は、ドラマを制作した日テレも、同様に声明などを出すべきだとの声がネット上などで強まっている。

  • 小学館(写真:アフロ)
    小学館(写真:アフロ)
  • 小学館(写真:アフロ)

「作家には内内にこういう事をしますのでって連絡あった」

   声明を出したのは、漫画を連載したプチコミックが所属する小学館の第一コミック局の「編集者一同」だ。

   2024年2月8日に同誌のサイト上で出た声明では、「作家の皆様 読者の皆様 関係者の皆様へ」と題して、「深い悲しみと共に、強い悔恨の中にいます」とまず切り出した。漫画家の著作者人格権は守られるべきで、声を上げることに勇気がいる状況であってはならないと訴えた。芦原さんの意向は伝えており、ドラマにも反映されたが、交渉を是正できないか組織として検証していくなどと約束した。

   この声明に対し、小学館で仕事をしている漫画家の山田こももさんが同日、「小学館として発表が無いので、現場の編集さん達が声を上げたらしい」と報告した。同社は、社員への説明会でこの問題について今後発表しないと伝えたとメディアで報じられていた。 山田さんは、「結構早い段階で、作家には内内にこういう事をしますのでって連絡あった」と社内の様子を伝え、編集者が独自の声を上げる準備をしていたと報告した(なお、山田さんの投稿は、9日夕になって削除された)。

   小学館も同じ8日、「芦原妃名子先生のご逝去に際して」と題して、プレスリリースを公式サイトで出し、「芦原先生のご要望を担当グループがドラマ制作サイドに、誠実、忠実に伝え、制作されました」などと説明して、「編集者一同」の声明を引用している。社内でどのような調整が行われたのかは不明だ。

民放労連「再発防止に努めるべき、との意見は組合員から出ております」

   出版界では、労働組合の力が強いとみられており、今回の声明は、労働者の立場を守ろうとしたものだとの見方もある。

   出版社の労働者でつくる出版労連の書記次長は2月9日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように答えた。

「今回の件に関しては、状況をまだ把握していません。一般論として、組合が会社と協定を結んで、役職者などの人事異動では、本人に発表する前に事前に組合と協議することになっています。人の配置や補充が適切か、会社に意見することができるわけです。出版社だから組合の力が強いということはありませんが、会社に物を言う人が目に留まりやすいのだと思います」

   小学館の編集者らが声明を出したことについて、X上では、「第一コミック局の現場の声に、経営層が折れた」「強烈な意志表示で、ほとんど反乱に近い」などと感心する声が出た。その一方で、声明ではトラブルに触れていないため、「何故そうなってしまったのかという部分がすっぽり抜けている」「やはり第三者委員会で調査すべきでは」といった指摘が見られた。

   今後については、「日テレにボールが回った感じ」といった声が上がっていた。

   民放テレビ局の労働者でつくる民放労連は9日、今回の小学館のようにドラマ制作サイドが独自に声明を出すような動きはあるかなどについて、「今のところそう言った話は聞いておりません」と取材に答えた。

   第三者委員会による検証を求める声などが組合員から出ているかについては、こう述べた。

「第三者委員会と言った声は聞いておりませんが、尊い人命が失われた訳ですから、しっかり調査して、再発防止に努めるべき、との意見は組合員から出ております。民放労連としての対応は、ドラマ制作現場の労働者の声を聞きながら慎重に検討していきたいと考えております」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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