就職人気企業ランキングが、コロナ禍をはさんで変化している。
学情の「就職人気企業ランキング」(2024年1月19日発表)によると、コロナ禍前は「JTBグループ」「HIS」など旅行・レジャー業界の人気が高かったが、直近は「講談社」「集英社」「任天堂」などデジタルコンテンツ提供企業への人気が高い傾向にあるのだ。
それは、なぜか。就活生の動向に詳しい採用コンサルタントは「コロナ禍を経験した就活生にとって、最も身近だったデジタルコンテンツへの関心が高いから」だと指摘する。
伊藤忠商事が1位であり続けるのはなぜ?
学情の「就職人気企業ランキング」によると、最新の2025年卒(2023年調査)では、1位:伊藤忠商事、2位:講談社、3位:集英社、4位:任天堂、5位:アサヒ飲料、6位:大日本印刷(DNP)、7位:KADOKAWA、8位:オリエンタルランド、9位:小学館、10位:味の素――という結果になった(図1)。
特長的なのは、2位:講談社、3位:集英社、7位:KADOKAWA、9位:小学館など、マスコミ・出版社系の企業がトップ10に多かったこと。4位:任天堂とあわせて、デジタルコンテンツ提供企業が人気を集めているかたちだ。
これに対して、コロナ禍前、そしてコロナ禍中はどうだったか。
コロナ禍前の2019年調査(2021年卒)では、インバウンドも好調だった影響もあってか、2位:JTBグループ、5位:エイチ・アイ・エス、10位:オリエンタルランドがトップ10入りするなど、「旅行」「レジャー」業界の人気が高かった(図2)。
一方、コロナ禍中だった2020年調査(2022年卒)では、2位:味の素、3位:アサヒ飲料、8位:ロッテ、そして10位:イオングループなど、生活に密着した企業が上位に並ぶなど、コロナ禍の「巣ごもり消費」をけん引した業界が支持を集めていた(図3)。
その後、コロナ禍が徐々に明けてきた2021年調査(2023年卒)や2022年調査(2024年卒)からは、最新の調査結果と同じく、出版社の「講談社」「集英社」が徐々に順位を上げてきていた。なお、2019年調査から最新の2023年調査まで、伊藤忠商事が1位を守り続けているのも特長だ。
コロナ禍をはさんで変化した就職人気企業ランキング――。就活生の動向に詳しい、採用コンサルタントの大塚教平氏(シナリオ・プランニング代表取締役)に、こうした傾向を分析してもらった。
――学情の調査の場合、伊藤忠商事が1位を守り続けています。このあたりの理由は。
大塚教平氏 一般的に大学生(就活生)は、自分の生活に身近な企業への関心が高いものです。今回のランキングもその傾向がみととれる結果ですね。1位の伊藤忠は生活消費関連事業が強みで、扱う商品や商材としては食べ物や飲料など。そのため、同社が手がける事業のことを学生はイメージがしやすく、その仕事に携わってみたい、と志望動機になりやすいのです。ちなみに、ほかに就職人気ランキング上位の常連といえば食品メーカーで、それなども象徴的です。