連続ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さん(50)が亡くなったことを受けて、脚本家でつくる日本シナリオ作家協会がユーチューブで投稿した動画が、「誹謗中傷」などがあったとして削除される騒ぎになっている。
動画の中の出演者発言が切り取られてX上で批判されており、出演者の1人は誤解を招いていると協会の削除対応を批判した。一体どんな動画だったのだろうか。
「原作者の方はあまり関係ない」などの発言が切り取られて拡散
この動画は、「脚本家たちの深夜密談」シリーズの特別編「緊急対談:原作者と脚本家はどう共存できるのか」と題して、2024年1月29日に協会の公式チャンネルで配信された。
ところが、その後に突然動画が削除され、「いただいたご意見は真摯に拝読させていただきました。出演者・関係者への誹謗中傷や脅迫等がございましたので動画は削除しました」との説明が表示された。
すると、2月1日になって、出演者の発言とされるものがX上で投稿され、その発言が拡散される騒ぎになった。「大切なのは原作であって、原作者の方はあまり関係ないかな」などとある出演者が発言したとされる部分が取り上げられるなどして、「原作者へのリスペクトが無い」「ひどい言い様。悲しくなる」などと、さらに炎上状態になっている。
これに対し、動画に出演した脚本家の伴一彦さんが2日、「対応として最悪です」と協会の削除をX上で批判した。
伴さんは、クレーム電話がかかり業務に支障が出ており、動画をいったん非公開にさせてほしいと協会から前日に電話を受けたと明かした。これに対し、「その対応は良くない」と意見したが、その後に理事会で決定して削除されたことが分かったという。伴さんは、削除されて判断材料がないため、「私が言ってもいないことを言ったと拡散されている」と嘆いていた。
その後、動画を保存していた人がいて、X上で転載された。
動画の緊急対談では、脚本家4人が登場しており、うち1人が動画を投稿した経緯を説明した。
動画投稿について、「タイミングもどうかと思います」との声も
それによると、芦原さんがドラマは原作通りでないと訴えた問題で、脚本家を批判する投稿がX上の9割を占めており、芦原さんが亡くなったことを受け、脚本家のドラマ作りを理解してもらうため、この対談を配信した。
出演者からは、原作者と脚本家がお互いの意思を知らないまま、テレビ局のプロデューサーがドラマ作りを進めていると懸念点が示された。また、別の出演者は、お互いを会わせると対立するとみてプロデューサーが間に入っており、脚本家が原作をすべて変えているわけではないと訴えた。
この出演者は、原作者には、自由に変えていい、なるべく変えてほしくないという2つのタイプがおり、最近は後者が増えているとした。そんな中でも、芦原さんがドラマ化を許可する条件として、「原作通りに」としていたことは「特異なケース」だったとの発言があった。
しかし、原作通りと言っても、ドラマと漫画は媒体が違うので、同じにはならないとの意見が出た。とはいえ、原作者には変える理由を説明すべきで、余裕がないテレビ局のスケジュールからその調整が十分行われていないとも指摘された。今回は、原作者と脚本家がそこまで対立していたわけではなく、分かりやすい対立構造で語られてしまったと嘆いた。
原作者と会うことについては、否定的な意見も出た。それが、「大切なのは原作であって、原作者の方はあまり関係ないかな」という発言だった。ただ、「人それぞれでやり方が違うので」とも付け加えていた。
こうした動画の内容について、切り取られた発言の真意を理解したとする声も出る一方、シナリオ作家協会が行った対応については、「動画の削除は悪手」だとして出演者の伴さんのX投稿に共感する声が出た。また、芦原さんが亡くなって炎上騒ぎになっているときに動画が投稿されたことについて、「タイミングもどうかと思います」「協会に発言させるのが真っ当」といった指摘もあった。
J-CASTニュースでは、シナリオ作家協会に対して今回の件について取材を申し込んでいる。回答があり次第、お伝えする。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
【重要】
— 伴一彦@「あなたも人を殺すわよ」(光文社文庫) (@sacaban) February 1, 2024
この動画、削除されています。
対応として最悪です。
本来なら作協YouTube委員会が説明すべきですが、私が言ってもいないことを言ったと拡散されているので、私から説明します。
昨日18時過ぎに作協YouTube委員から連絡があり、作協事務局にまでクレーム電話がかかり業務に支障が(続く) https://t.co/NCdgpabzCw