子どもが自分専用のスマホを持つとき、親は何かと心配なものだが、小学高学年の4割以上、6年生では65%がスマホを持つ時代になった。
NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年1月29日に発表した「小中学生のスマホ所有率上昇 調査開始から初めて小学校高学年で4割を超す」で明らかになった。
小学生にスマホを持たせるとき、何が一番大切か、専門家に聞いた。
小学6年生が65%と、ほぼ中学生並み
モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、関東1都6県の小学生・中学生とその親600人が対象。まず、小中学生に自分専用のスマホ、キッズケータイを持っているかを聞くと、スマホの所有率は2022年より全学年で上昇した【図表1】。
小1~小3の低学年で18%、小4~小6の高学年で42%と、調査を始めて以来、初めて小学高学年で4割を超えた。中1~中3の中学生も79%と、8割に迫っている。
これを学年別に見ると、小学6年生が65%と、ほぼ中学生並みの所有率に近づいていることがわかる。中学生になると7割を超え、3年生では8割(82%)に達している【図表2】。
最初に使い始めた子どもの自分専用のスマホ(Wi-Fiでの利用を含む)はどのようにして手に入れたかを聞くと、小学生の半数以上、中学生の3人に2人が販売店の店頭で購入していた。家族の中古を譲った割合も約3割にとどまっている。
小学校で始まったICT教育で、スマホが必要に
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の水野一成さん(子ども・シニア・防災調査担当)に話を聞いた。
――小学高学年のスマホ所有率が、2020年で20%なのに、3年後の2023年には42%と2倍以上に急速にアップしましたが、背景には何があるのでしょうか。
水野一成さん ICT教育によって子どもたちの創造性を高めるために、文部科学省が2019年から始めた「GIGAスクール構想」の影響が特に出ているのが小学生高学年だと思います。「GIGA」(ギガ)は「Global and Innovation Gateway for All」(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)を意味します 。
これは、全国の児童生徒にパソコン端末1人1台と、そのパソコンをインターネット環境につながるようにするための校内LANや無線LANなどの高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するものです。この構想のおかげで、子どものICT利用の状況が大きく進みました【図表3】。
当研究所の調査では、小学高学年では学校で貸与されるタブレット・パソコンが2020年にはわずか3%でしたが、2022年には一挙に82%に急上昇しています。それにつれて、子どもたちが家庭にあるタブレット・パソコンを利用する割合も、33%から63%まで大きく伸びています。
――たしかに、登下校、あるいは塾や習いごとなどの送り迎えで、安全のために小学生の間から子どもに携帯電話を持たせる家庭は増えています。
しかし、そういった需要であれば、スマホでなくとも家族や学校など、特定の人との通話に機能を限定し、GPSや防犯ブザーの機能を備えた「キッズケータイ」があります。
それなのに、小4~6年のキッズケータイ所有率は大きく減少しています。この理由は何でしょうか。
水野一成さん いくつか要因がありますが、1つは通信料金が安くなっていることがあるのではないでしょうか。当研究所の調査では、現在、小学生のスマホの平均利用料金は月3000円未満が約9割になり、高いと思わない親が増えています。
また、GIGAスクール構想が本格開始したことで、子どもたちがわからない言葉の検索や宿題の調査など、キッズケータイではできないことまで行うようになり、スマホのスキル・リテラシーが上がったことも背景にあると思います。
親の心配「健康」「依存」「友人関係」「悪質サイト」「課金」
――なるほど。しかし、小学生にスマホを持たせることに関しては、親の心配は尽きないですよね。
水野一成さん おっしゃるとおりです。これまでの調査では、親の心配は大きく2つあります。
1つは、子どもの健康面への影響です。「長時間利用による目や脳など、さまざまな健康への悪影響」と「常に視聴を優先する、スマホ依存にならないか」という不安ですね。
2つ目が情報の取り扱いです。具体的には「LINE、メールなどの投稿内容から友人とトラブルになること」や「子どもが個人情報を公開してしまうこと」などを心配しています。
そのほか、「悪質サイト・アプリの見分け方」や「QRコード決済や課金・ネット購入などお金の使い方」を不安視する親も多いです。
――心配のタネが尽きないですね。小学生にスマホを持たせることで、親が考えなくてはならない一番大切なことは何でしょうか。
水野一成さん 子どもが利用するうえでのルール決めです。とくに最初が肝心。しっかりと話し合って、親子で納得するルール作りが必要と思われます。最初は、閲覧内容のフィルタリング、コンテンツの購入・ダウンロードの制限ができる、ペアレンタルコントロールサービスを利用するのも方法です。
また、子どもの利用シーンの拡大、進級のタイミングでの見直しも大切ではないでしょうか。さらにルールを破った時の対応も合わせて考えておきたいです。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)