「不幸なのは作品が変えられることではなく...」過去にドラマ化トラブルで連載終了 人気漫画家・高橋しん氏、芦原氏訃報に複雑胸中

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   2024年2月1日、人気漫画「いいひと。」などで知られる漫画家の高橋しん氏がXで、芦原妃名子氏の訃報を受け、メディアミックスに対し胸中を明かした。

  • 高橋氏のX(@sinpre)より
    高橋氏のX(@sinpre)より
  • 実際の投稿(高橋氏のX(@sinpre)より)
    実際の投稿(高橋氏のX(@sinpre)より)
  • 高橋氏のX(@sinpre)より
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条件に反して「多くのかたが感じたように、ゆーじは変え『られて』いました」

   高橋氏の「いいひと。」は1997年に俳優・草彅剛さん主演でフジテレビ系列でドラマ化されている(共同テレビ、関西テレビ制作)。高橋氏は過去に、公式サイトで「最初に約束があり、結果的に約束が守られなかったから、約束通り原作を降りた」とトラブルがあったことを明かしている。次のような経緯だ。

「正直に言うと終了を決めた直接のきっかけは、テレビドラマ化でした。関西テレビ・共同テレビのかたにドラマ化の許可を出すための条件の中に、ゆーじと妙子だけは変えないこと、という一文がありましたが、多くのかたが感じたように、ゆーじは変え『られて』いました。 私は、もうこれ以上わたし以外の誰にも変えられずに、読者の方々の中の『いいひと。』を守ること、そして同時に多くの読者の方に悲しい思いをさせてしまった、その漫画家としての責任として私の生活の収入源を止めること、その二つを考え連載を終了させようと思いました」

   漫画家・芦原妃名子氏は、「セクシー田中さん」(23年10~12月放送、日本テレビ系)の第9、10話の脚本を手がけており、2024年1月26日にその経緯として、ドラマ化に際して提示していた条件などをめぐる制作側とのやり取りをブログで明かしていた。その後、28日にX(旧ツイッター)で「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」とポストしたあと、翌29日に亡くなったことが報じられた。

   高橋氏は2月1日のXの書き込みで、「私の読者の皆様へ ご心配されてる方もいらっしゃるかもしれませんので、現在思うことを」と切り出し「まずは先生のご冥福をお祈りしております」と芦原氏を追悼した。

「あってはならないことですが、先生が選ばれた意志は尊重いたします」

   続けて「私は脚本問題に対して先生が経緯を綴られたことを皆さんとおそらく同じようなタイミングで知りました」とし、「真っ先にすべきことは、先生の心とこれから生み出される作品たちを守ることと考えました。声を上げずに出来るだけ早く落ち着くのを信じて待つこと。一つ一つは小さな善意の声でも燃料を得て大きくなった火には方向のコントロールは効かず火を好む無関係な方々も引き寄せる力がある為です」と書き込んだ。

   「先生が一息ついて落ち着かれた頃に、出版社さんを通して少しでも楽になれるような言葉を届けられたらと思っていました。僭越ですがもしご縁があれば、私のような小さな作家でも何かお話くらいはお聴きできるかもしれないとも。みんな、みんな、先生の味方ですよ。私もそうです」と悔やんだ。

   「遅かったことを後悔していますが、面識もないただの同業者でしかない私にはできることが何一つなかったタイミングであることも理解はしています」と振り返った。

   「作家として生きることを選んだ者の、どんなに近しい人にも本質的にこころの奥底から理解してもらえない孤独を。あってはならないことですが、先生が選ばれた意志は尊重いたします。先生が今解放されて安らかでいらっしゃることを願います。お疲れ様でした」と労った。

「不幸なのは作品が変えられることではなく 作品が失敗することではなく...」

   「もう遅いのですが、未来の作家さんとそこから生み出されるはずの煌めく星々の作品を守るために 作品を他メディア化をするにあたっての羅針盤になるように 作家界メディア界の垣根なく協力してホワイトリストの作成や安心して作品を委ねられる人たちとの心を繋ぐ仕組みの共有を考えてみてもいいのかなと夢想しています」とつづった。

   「もちろん契約書や覚書き等の整備、エージェントや弁護士さんを立てて作家自身が矢面に立たなくてもいい様な仕組みなど今すぐ取り組み考えるべきことはあります。トラブルになってからの仕組みは大事です。同時に、信頼を担保できる、前を向ける仕組みも大事と思うのです。作家と他のメディアは本来対立する立場ではないからです。お互いに信頼し作品を委ねられる。これからもそうした成功例を辛抱強く積み重ね、育てて、共有していかなくてはならない。今まで育ててきてくださった方々や、これから育てて行ってくださる方々と共に。私たちはクリエイターです。私たちには知恵があるはずです」と見解を披露した。

   「不幸なのは作品が変えられることではなく 作品が失敗することではなく 作品が作家の痛みを自分たちの痛みとして感じられない人に委ねられる そう感じさせてしまう事です」と思いをつづった。

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