ウーバーイーツや出前館、Woltといったフードデリバリーサービス。コロナ禍で不要不急の外出が制限されていた時期には、需要が高まった。コロナが「5類」に移行した現在、ビジネスはどうなっているだろう。
J-CASTニュースBizは、フードデリバリー業界に詳しい識者を取材。すると、事業者が「赤字体質を脱却するのは難しい」との指摘があった。業界の今後を占ってもらった。
2022年に事業者が続々撤退
外食・中食市場情報サービス『CREST』を提供するエヌピーディー・ジャパンが2023年12月18日に発表した調査レポートによると、2023年のデリバリー市場規模は8603億円規模。22年の7754億円から、プラス11%の成長となっている。コロナ禍後も、順調に伸びているようだ。なお、デリバリー市場には仕出し、ケータリング、オードブルデリバリー、寿司、ピザ、ゴーストレストランなどが含まれている。
一方、2022年はフードデリバリーの撤退が続いた。コロナの5類移行前の年だったが、1月に「フードパンダ」がサービス休止。2月に「X TABLE(クロステーブル)」、5月は「ディディフード」、8月「ドアダッシュ」が相次いで撤退した。今日でも使用できるフードデリバリーアプリは出前館、ウーバーイーツ、Wolt、menuがある。
このうち、決算情報を公開しているのが出前館。直近の2024年8月期第1四半期決算では、売上高が121億700万円で、前年同期比0.7%減。営業損失は12億5600万円で、前年同期の42億4400万円と比べて赤字額は縮小した。
ユーザー数の推移はどうか。決算発表時の数字を見ると、2023年は四半期ごとに約846万人、約769万人、約712万人、657万人と一貫して減っていた。2024年1月発表の同年第一四半期決算では618万人と、さらに減少している。
コストの大部分は「配送にかかわる人件費」
外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏に、フードデリバリー業界の変化について聞いた。堀部氏自身も、ケータリング店を経営する。
「フードデリバリーアプリは定着しましたが、高収益を実現して赤字体質を脱却するのは難しい」
こう分析する。
デリバリーサービスの事業者にとって、コストの大部分は「配送にかかわる人件費」という。事業者は配達員と業務委託の形態をとっているが、事業者が得る飲食店からの手数料35%では、「とても配送に支払う人件費を賄えません。しかし、飲食店も35%の手数料を払うと原材料費などと合わせて赤字となるのです」。
さらに今後は、人手不足による人件費が高騰する可能性があると堀部氏。こうなると、「今の売価では、高収益を実現するのは難しいと言えます」と述べた。
配送コストを賄ったうえで、利益を上げるには、配達する料理の金額を今後値上げせざるを得ないだろう。そこで、想定顧客を絞り込む必要があるかもしれない。
「タイパや外出したくない理由がある人は、(料理が)高単価でも価値を感じて使い続けてくれる。全顧客対応型ではなく、利用者のニーズに合わせてサービスを提供する形になると考えます」
と堀部氏は語った。