スマートフォン(スマホ)の中のやりとりだけで贈り物ができる「デジタルギフト」が花盛りだ。みんなどれだけ利用しているだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年1月26日に発表した「デジタルギフトに関する調査」で、4人に1人が利用していることがわかった。
デジタルギフトで上手に気持ちを伝えるコツは何か。調査担当者に聞いた。
デジタルギフト経験者の「満足度」は90%超
デジタルギフトとは、電子上で手軽にギフト券や商品を提供できるサービスのこと。新型コロナ流行から、「ギフトを贈る」行為もデジタル化が進んだ。最近では、バーコードなどで受け取り、店頭でコードを見せることで贈り物を受け取るタイプや、受け取り手が住所を自分で入力するタイプなど、さまざまなデジタルギフトが広まっている。
現在、「デジコ」「giftee(ギフティ)」「Amazonギフトカード」「Appleギフトカード」「Google Playギフトカード」「LINEギフト」「SB GIFT」などのサービスが知られている。
MMD研究所の調査(2023年12月26日~2024年1月5日)は、18歳~69歳の男女5000人が対象。予備調査で傾向を調べた後、本調査ではデジタルギフトを贈った経験がある433人を対象に詳しく聞いた。
まず、5000人を対象に「デジタルギフトを知っているか」と「利用したことがあるか」を聞くと、デジタルギフトの認知は61.6%、利用経験は26.5%だった。ちなみに、「利用経験」とは、「受け取った経験」ではなく「人に贈った経験」を聞いている。
これを、性別年代別にみると、認知は女性60代(67.9%)が最も多く、次いで男性10代(66.2%)、女性50代(65.8%)となった。利用経験は、男性20代(36.9%)が最も多く、次いで男性30代(34.7%)、女性20代(30.8%)と続いた【図表1】。
デジタルギフトを利用したいかどうかを聞くと、利用意向は男性10代(64.9%)が最も多く、次いで男性20代(53.3%)、男性30代(50.9%)となり、全体的に男性のほうが高かった【図表2】。
次に、デジタルギフトの利用意向がある2169人を対象に、利用したい理由を聞くと(複数回答可)、男性と女性では順位に違いがあった。男性は「選べるギフトの種類が豊富」(37.8%)が最も多かったが、女性の1位は「直接会うことが難しい相手にも贈れる」(45.2%)だった【図表3】。
この男女の違いは、「利用したくない理由」を聞いた結果にも表れた(複数回答可)。男性は「気持ちが伝わりにくいと思う」(10.3%)が最も多かったが、女性の1位は「受取主が利用方法を知らないかもしれない」(13.1%)だった【図表4】。
いずれにしろ、デジタルギフトを贈った経験者の「満足度」は、91.7%と非常に高かった。
50、60代女性が、20代女性より知っている秘密
J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者(女性)に話を聞いた。
――「認知」について疑問があります。デジタルネイティブ世代の10代男性は2位にきたのは当然として、最もデジタルに疎いはずの、60代女性が1位、3位に50代女性という結果が理解できません。
担当者 60代であればデジタルに疎いとはいえ、多くの人がPCやスマホを利用しています。この調査もインターネット回答なので、通常のシニアより少しデジタルのリテラシーは高いという文脈も考えられます。
また、50代・60代女性は贈り物文化の中で、お中元・お歳暮などシーズンギフトを贈る・受け取るタイミングが多い人々です。また、年齢層が上がってくるとプレゼントを渡したい相手(子や孫など)に直接会える機会が少なくなっているし、企業が提供するアプリの特典としてもらえたものをギフトとして認知して回答されたケースも考えられます。
――なるほど。それで納得しましたが、スマホの利用率が最も高く、お互いのプレゼント交換でも最も利用している頻度が高いと思われる20代女性の認知が最低なのは驚きです。30代女性も低いですし、同世代の女性としてどう思いますか。
担当者 内容理解度を見てみると、女性の中では10代が45.7%、20代が42.2%、30代が36.6%と若年層から順に高い結果となりました。このことから、実際に触れたことがあっても、それを「知っている」と認識するには理解が追い付いていない状況の人も多く、認知が低くなったことが考えられます。
また、認知が最低とはいえ利用経験が高く、離脱率(認知から利用に至るまでの乖離)が最も少ないのが20代女性です。実際にサービスを知ってから利用経験に至るまでのハードルが低いという観点では、利用意向も女性20代は高く出ていますので、今後の利用の増加が見込めると考えます。
贈る心、相手本位の女性、自分本位の男性
――「利用したい理由」「利用したくない理由」でも、女性と男性ではハッキリ差がありますね。特に「利用したくない理由」で、私のような年配男性(70代)では、「気持ちが伝わりにくい」が一番と思いますが(実際、男性1位がそうです)、女性では上位3位に入ってこないのが不思議です。
担当者 女性が利用したくない理由は、「受取主が利用方法を知らないかもしれない」「商品やサービスと引き換えるのは相手が面倒だと思う」「相手の生活圏内で活用できるか分からない」といった、どちらかというと受け取る相手側の事情を心配することが中心です。
一方、男性では一番に「気持ちが伝わりにくい」と、ギフトを贈る自分の事情を心配しています。相手の事情を優先させる女性の気持ちと、自分の事情を優先させる男性の気持ちの差が出ているのかなと考えられます。
――そう言われると、確かにそうですね。ハッとしました(笑)。専門家として、今の時代のデジタルギフトのメリット、デメリットは何だと思いますか。また、それを踏まえて、上手な利用方法をアドバイスしてください。
担当者 デジタルギフトのメリットとしては、「贈りたい時にその場ですぐに贈ることができる」「直接会うことが難しい相手にも贈ることができる」「選べるギフトの種類が豊富」があげられます。
デメリットとしては「受取主が利用方法を知らないかもしれない」「気持ちが伝わりにくい」「商品やサービスと引き換えるのは相手が面倒」があげられます。となると、「直接会うことが難しい相手にも贈ることができる」という点が、メリットにもデメリットにもなりそうです。
だから、受け取り手がデジタルギフトを知っているのか、受け取った時に対応できるのかなど、まずは相手の状況を確認したうえで贈ることが大切です。利用者が増加すれば、もっとデジタルギフト市場全体が盛り上がっていくと考えます。
――あなた自身は、デジタルギフトを利用したことはありますか。
担当者 何度かあります。お世話になっている人の誕生日や、自分が困っている時に助けてくれた際に贈りました。誕生日などのきちんとしたギフトでなく、軽い感謝を示したい時にも気楽に使えるように、数百円から数千円まで価格設定の幅が広いので、デジタルギフトによって「ギフト=贈り物」という高いハードルがとても下がったと感じました。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)