明治安田生命保険が、自社ブランドの通称名「明治安田生命」を「明治安田」に変更することを2024年1月16日に発表した。
リリースによると、「従来の生命保険会社としての役割を超えて」「新たな役割発揮をしていくことへの決意が込められております」と、名称変更の理由として、生命保険に限らず業務の幅を広げる決意が書かれている。
新たな事業展開を見据える前向きさがうかがえるものの、その一方で何を事業とする企業なのかわかりにくくなることはないのだろうか。だが、企業のネーミングやブランド開発事業を手掛ける有識者は「記憶に残るネーミング」の重要さを指摘する。
企業のビジネス領域が、前社名では名乗り切れない
このような名の通ったブランド名、社名を変更した類似の例は過去にもある。たとえば2009年、西武百貨店(当時)の店舗屋号を「西武」に変更。これは、西武百貨店、そごう、ミレニアムリテイリングとの合併の影響による。また、11年には、明治グループの再編の動きのなかで、明治乳業(当時)が菓子事業を中心とした「明治」に商号を改めた。
ブランド名や社名が短くなって覚えやすくなる反面、企業のブランド力を減少させかねないのではないだろうか。こうした改名にはどのような狙いがあるのか。J-CASTニュースBiz編集部は、企業のネーミングやブランド開発事業を手掛ける創造開発研究所の代表・高橋誠氏に意見を求めた。
高橋氏はこうした改名について、「たしかに『どんな事業を行う企業なのかがわからなくなってしまう』可能性があるかもしれませんね」としつつも、
「各社はすでにこの略称で、企業認知はされていると考えてのことでしょう。もちろん企業のビジネス領域が、前社名では名乗り切れないと考えたこともあるでしょう」
と指摘。自社のブランド力に自信を持ちつつ、将来を見据えて改名に踏み切ったのではないかと推測する。
さらに、高橋氏は上記の例に加えて、23年に持ち株会社制への移行に伴い、持株会社の商号を「TOPPANホールディングス」に変更した「凸版印刷」(当時)の例も挙げつつ、「TOPPANは印刷部門の売り上げは全体の3割程度といわれます。もう印刷会社ではないのです」とし、こうしたことからも祖業の「印刷」を社名から外したのではないか、とみる。