動画や音楽のサブスクリプション型のサービスの値上げの波は、日本にも来るのだろうか――。
日本ではNTTドコモが2024年1月23日、「DAZN for docomo」の料金を、3月1日から3700円から4200円に値上げすると発表して、話題になった。
海外に目を向けると、23年7月には「spotify」が世界53か国で値上げの実施を発表した。10月には米アップルが、サブスクリプションサービスの「Apple TV+」「Apple Arcade」「Apple News+」「Apple One」を米国で値上げ。同じく10月には「Netflix」が、米国、英国、フランスで一部のプランの料金を引き上げている。いずれのサービスも日本での値上げは未実施だ。
なぜいま、海外でサブスクの値上げが相次いでいるのか。その背景とは――。
「米経済で物価上昇が続き、人件費を含む製作費が高騰」
海外、とくに米国でのサブスクの値上がりの理由について、J-CASTニュースBiz編集部は、米国経済やITに詳しいライターの岩田太郎氏に聞くと、Netflixなどの場合、「米国の配信大手の事情が絡む」と説明する。
「米経済で特に2022年から広く物価上昇が続き、未だに止んでおりおません。このため、人件費を含む製作費が高騰しています。また、韓国政府からのコンテンツ輸出奨励助成金などのおかげで高品質にもかかわらずコスパがよかったNetflixの韓国コンテンツも、人気のために売り手の立場が強くなり価格が上昇しています。そのため、製作費の上昇分を会費に転嫁する必要が出てきました」
「値上げ幅が極端でない限り、消費者は受容するということ」
これに加え、米国の状況として、岩田氏は「インフレによって食品からクルマまで幅広く値上げが行われたため、消費者がサブスクの値上げもまた抵抗なしに受け入れた」と説明。さらに、
「Netflixの米国内の料金については2022年1月に各プランで値上げを行いましたが、2023年10月に再びプラン料金を引き上げています。製作費高騰分をカバーするだけでなく、消費者が値上げに抵抗しないチャンスを利用して収益をさらに改善する狙いがあると思われます。実際に、同社では2023年10~12月期の全世界会員数は1310万人増加するなど、値上げの影響は見られません」
とし、いわゆる客離れは起きていないと指摘する。
岩田氏によると、ユーザーが値上げを受け入れる傾向は、Netflix以外のサブスクサービスにも共通している、と明かす。
「これは、ゲーム分野やアプリストアなどにおいても同様の理由だと思われます。値上げ幅が極端でない限り、小刻みの引き上げであるならば消費者は受容するということです」
最後に、米国での値上げの動きが日本に波及するか否かについては、
「コスト増による値上げの必要性は日本でも同じだと思います。ただ、日本では米国ほどインフレが進んでいないので、どんどん値上げできる米国と比べて限界があるのではないでしょうか」
と説明した。
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)