「eスポーツ」が誕生して久しい。映像ゲームを「スポーツ」として捉え、プロ選手も存在するほどだ。だが、それらプロ選手を、あなたは何人知っているだろうか。
その反面、海外では2023年7月に国際オリンピック委員会(IOC)が主催する「オリンピック・eスポーツ・シリーズ」が開催されるなど、盛り上がりを見せている。eスポーツがオリンピックの競技に採用される日も近いのだろうか。
海外ではこのような盛況ぶりだが、こと日本でのeスポーツの普及はまだまだなのだろうか。ゲームライターを取材した。
海外ではPCゲームやモバイルゲームに勢いがある
eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際にこう呼ばれる。そのジャンルはさまざまで、格闘対戦ゲーム、シューティングゲーム、レースゲーム、スポーツゲームなど、多岐にわたる。
では、日本でのeスポーツの盛り上がりはどうか。J-CASTニュースBiz編集部はゲームライターの渡邉卓也氏にぶつけた。渡邉氏によると、日本でeスポーツが海外に比べて盛り上がらない理由として、家庭用ゲーム機が普及している一方で、海外ではPCゲームやモバイルゲームに勢いがある現状が影響しているのではないか、と指摘する。
「たとえば韓国は、PCゲームを遊ぶためのPCバン(オンラインゲーム専用のネットカフェ)がたくさんあります。また、東南アジアはモバイルゲームが主流で、バトルロイヤルゲーム『Garena Free Fire』などの大会で盛り上がっているわけです。ということは今後、日本でもPCゲーム、もしくはモバイルゲームのほうにより多くのゲーマーが流れていくと、自然と、eスポーツも盛り上がる可能性が考えられます」
くわえて渡邉氏は、日本国内の家庭用ゲーム機の法的な立ち位置も影響している可能性がある、と指摘した。
「日本では家庭用ゲーム機を使ったeスポーツ大会はゲームセンター営業と見なされ運営が難しくなるという指摘があり、これによってハードルが高くなっているかもしれません」
「ぷよぷよ」はeスポーツとして存在感
賞金の額はどうだろうか。海外ではこれまでに優勝賞金が18億円という大会もあったが、日本では10億円規模の優勝賞金がかかった大会は開かれていない。日本国内の優勝賞金が低すぎるのかと聞くと、渡邉氏は、「必ずしもそうでないように思われます」と答える。
「たとえば、『モンストグランプリ2023 ジャパンチャンピオンシップ』は賞金・商品総額3000万円となっており、『RAGE Shadowverse 2023 Winter』では優勝者が1000万円を獲得しています。また、2021年には『PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE SEASON 1』が優勝賞金1億円を出して話題になりました」
なお、直近では2024年1月28日に、「ぷよぷよeスポーツ」の大会である「ぷよぷよカップ」が東京ビッグサイトで開催されるという。ちなみに、日本国内では「ぷよぷよ」がeスポーツとして比較的認知度が高いという。その理由や、eスポーツの今後の展望を渡邉氏に聞くと、次のように答えた。
「セガの『ぷよぷよeスポーツ』をはじめ、コナミの『実況パワフルプロ野球』、バンダイナムコエンターテインメントの『太鼓の達人』など、eスポーツとして盛り上げようとしているタイトルがいろいろと存在します。結局のところ、大会向けゲームとしてのルール等の調整、大会の開催、新規プレイヤーの確保、コミュニティへのケアなど、努力を続けているタイトルが支持を得られるという、至極当たり前の話ではないでしょうか。eスポーツが急に流行ることは考えにくいのですが、各ゲームタイトルがたゆまぬ努力を続けた結果として、eスポーツが普及するのではないでしょうか」
(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)