2月3日の節分の日が近づいてきたが、恵方巻、食べますか?
帝国データバンクが2024年1月24日に発表した「2024年節分シーズン『恵方巻』価格調査」によると、今年の恵方巻は前年比4%程度の値上げに収まり、「海鮮恵方巻」では値下げ目立ち、「お買い得感」が強まるという。
どんな食べ方がおススメなのか。調査担当者に聞いた。
マグロ、ホタテ、カニの原材料価格が安値に
帝国データバンクは、全国の大手コンビニや外食チェーン、スーパー、百貨店、著名な日本料理店など計104社で販売される恵方巻の価格を調査した。
その結果、一般的な五目・七目の恵方巻(太巻・1本当たり)における平均価格は948円(税込)だった。昨シーズンの909円に比べて39円、率にして4.3%の小幅な値上がりとなった。70~150円の値上げだった昨シーズンに比べると一服感が出ている【図表1】。
特に、海鮮恵方巻ではマグロ、ホタテ、カニなど原材料価格が安値となり、大幅に値下げしたケースも目立つ【図表2】。「食品ロス」問題に焦点が当たっているため、今シーズンは大手コンビニ等をはじめ、ほぼすべての企業が予約制を導入しているが、すべて売り切ることができるかどうか。
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。
――昨シーズンに比べて、かなり「お得感」が出ていますが、理由は何でしょうか。
飯島大介さん 原材料費が大幅に値上げした昨シーズンに比べると、味付けかんぴょうが中国で不作となり、30%以上の価格高騰が見込まれたり、海苔が記録的な不作となって高くなったりしている以外は、軒並み安くなっています。
太巻きに用いられる玉子焼きでは、大幅に高騰した鶏卵価格が一転して下落しているほか、昨シーズンに3割以上の値上がりとなった穴子も価格が落ち着いてきました。ほかにマグロやイクラ、ホタテ、クルマエビといった水産物が、最大で20%超の安値になったのが大きいですね。
おかげで、値段の高い海鮮恵方巻で、価格の据え置きや小幅な値上げにとどまっています【図表1】。
「食品ロス」解消は、掛け声倒れになるか?
――海産物が軒並み安くなったのは、福島第一原発の処理水放出問題で、中国が日本産水産物を輸出規制し、国内に出回っているからでしょうか。
飯島さん 中国の禁輸問題もありますが、ロシア産のカニやタラといった水産物がたくさん入ってきていることのほうが大きいです。ロシアがウクライナに侵攻したことに対する経済制裁で、米国がロシアの水産物を買わなくなったのです。
そのため、ロシアの水産物がダブついて、「経済制裁」の隙間を縫って日本に大量に入ってきています。米国が厳格に経済制裁を行っているのに対し、日本は水産物を「経済制裁」の対象から除外したこともあり、かなり安くなっています。
――恵方巻というと、近年、食品ロスが問題になっていますが、今年はどうなるでしょう。
飯島さん 一昨年(2022年)あたりから「食品ロス」の声が高まり、昨年(2023年)は原料高もあって予約制度を導入するところが多かったのです。今シーズンは食品ロスを意識して、大手コンビニも含め、ほぼすべての企業が予約制度を導入しています。しかし、それで食品ロスがなくなるかというと、疑問です。
まだ、予約制度を導入するところは数千円、1万円クラスのプレミアがつく高級海鮮恵方巻品に限られるところが大半です。1000円クラスの一般品となると、予約制度を浸透させるには、ネット受付の人手とか、システムの構築とか、手間がかかります。
安い一般品に、そこまで手間をかけるメリットがありません。「環境に配慮して食品ロスを防ぐ」という建前はいいのですが、最後は「半額シール」を貼って、やっと売り切れるかどうかというのがスーパーの現実です。しかも、コンビニでは本社の方針もあって、値段を下げられないところが多いですから、食品ロスはかなり発生するかもしれません。
被災地の復興を願いながら、いただきたい
――今年のおススメはどれですか。
飯島さん 海産物系がだいぶお得ですから、午後9時くらいまでスーパーで粘り、「半額シール」を貼ったところをまとめて買うのがおススメですね。
――ところで、恵方巻といえば、節分の日にその年の「恵方」(縁起のいい方向)を向いて、無言で丸ごと1本食べ切るというのが習わしです。商売繁盛を願った大阪船場の商人たちが始めたといわれています。
ところで、みんなの関心が集まる今年の「恵方」は、「東北東」の方角です。発祥の地の大阪からみると北陸方面、能登半島の方向になります。
飯島さん 恵方巻は、もともとは商売繁盛で始まったかもしれませんが、今では、「家族全員の幸せ」「みんなの健康」「世界の平和」を祈る行事になっています。方角や形式にとらわれず、日本中の人々が被災地の復興と、被災した人々の幸せを願いながら、「恵方巻」をいただきたいものですね。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)