会社員に異動はつきもの。最近は、異動部署を自分で決められる企業も出始めているが、上司が決める場合がほとんどだ。異動を言い渡された時、あなたのモチベーションはどうなる?
人事向けサービスを展開する調査会社のアスマーク(東京都渋谷区)が2024年1月22日に発表したリポート「自主調査 部署異動とモチベーションの関係」によると、異動でモチベーションが上がったという人が、下がった人より多い。気持ちよく異動するコツはなにか。調査担当者に聞いた。
「モチベーション上がった」45%、「下がった」18%
アスマークの調査(2023年11月16日~21日)は、正社員として勤務する20代~50代の男女1200人(それぞれの年代で男女150人ずつ)が対象だ。
まず、今の会社に限定して「社内での部署異動の経験があるか」と聞くと、「経験あり」と答えたのは3割半(35.8%)で、6割強(64.3%)が「経験なし」だった。
異動の経験がある429人に「異動によってモチベーションがアップしたか」と聞くと(複数回の経験者は直近の異動)、「モチベーションが上がった」という人は4割半(45.3%)を超え、「モチベーションが下がった」(18.5%)の2倍半に達した【図表1】。
「どちらともいえない」という人が3割半(36.4%)いるものの、異動はモチベーションのアップにつながるケースのほうが多いようだ。
これを性別、年代別で比較すると、興味深いデータが表れた。「モチベーションが上がった」という人が男性20代(57.1%)で突出して多く、次いで女性の20代~40代が5割超で続く結果になったのだ【図表2】。
一方、男性の40代~50代では「モチベーションが上がった」という人は少なく、特に男性50代では約3割(27.0%)しかいなかった。
女性のほうが、異動を歓迎する人が多い理由
こうした結果をどうみたらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は調査を行なったアスマークの担当者に話を聞いた。
――異動によってモチベーションが上がった人が約45%、下がった人が約18%。この結果だけみると、異動万々歳ですが、その理由は何でしょうか。やはり、人事の基本として「適材適所」ということが異動を通じてなされているからでしょうか。
担当者 あくまで個人の感想ですが、適材適所や、本人の希望を反映した異動がなされているのかなと思いました。
――異動経験者が全体的に男性のほうが女性より多く、また、年代が上がるにつれて異動回数が増えるのか、特に男性の40代以上が管理職年代に入るからですか。
担当者 おっしゃる通り、40~50代になると管理職になれる人、なれない人が出てきますので、そのタイミングでの異動も多くなるのかもしれませんね。
男女差については、女性は結婚や出産などのライフスタイルの変化などで、離職や転職を選択する機会が男性よりやや多くなるといったことも、このような違いにつながっているのかもしれません。
――異動経験者にモチベーションの上がり、下がりを聞いた結果が調査の白眉ですね。男性20代にモチベーションが上がる人が非常に多いこと、また、女性の20代~40代も半数以上に達していることが、とても面白いです。それに比べたら、男性40代は4割程度ですから、気の毒になります。こうした差はどこからくるのでしょうか。
担当者 男性20代のまだ勤続年数も短いなかでは、「頑張りを認められている人から異動することが多いのでは」という仮説を立てると、「認められた」「同期より先んじた」という意識から、異動そのものがモチベーションアップになるのではと考えられます。
女性30~40代のモチベーションが高いことに関しては、単に「やりたい仕事やポジションに異動することができてうれしい」というだけでなく、仕事と家庭を両立しやすいポジションへの異動でも、モチベーションが上がる人が多いと思われます。
そういった点が、特に40代男性には考えにくいところで、女性は男性よりもモチベーションが上がる要因が多岐にわたるのかもしれません。
転職を考える前に、異動を希望するのも方法
――なるほど。ところで、企業で働く人に異動はつきものですが、どういう心構えで異動に臨むといいでしょうか。私はかつて、意に沿わない部署への異動辞令が出て落ち込んでいた時、ある先輩からこう言われて、ハッと思い直しました。「すべての異動は栄転だよ」と。
また、企業の人事担当者は、異動によって企業を活性化させるのはどういう点を配慮することが大切でしょうか。
担当者 その先輩のお言葉、とても好きです(笑)。昨今は転職する人が増えています。転職を考える要因は多々あると思いますが、もしモチベーションが上がらないことが問題なのであれば、社内の別の部署に異動希望を出すという選択肢もあるのではと思いました。
また、調査結果をパッと見ると、異動はモチベーションが上がる割合が高いので、積極的にしたほうがよいという風に見えますが、どの性別年代別でも「異動でモチベーションが下がった」という人が10%以上、なかには20%以上もいることは無視できないと思います。
人事担当者におかれましては、本人の意向や適性を十分に考慮した異動ができるチャンスを作ってあげることが、組織の活性化につながるのではと思いました。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)