道の駅などで販売されている「手作りお漬物」が、転機を迎えている。
2021年に施行された「食品衛生法」の改正が2024年6月1日から、経過措置期間を終えて全面実施になるからだ。これによって、漬物製造販売が許可制となり、衛生的な製造施設などの整備が求められるようになる。
すると、衛生設備の整っていない農家の人が台所や作業場で仕込んでいた手作り漬物は、販売が難しくなるのだ。
そうした中、大きな影響を受けるのは、主として個人農家から仕入れしてきた道の駅だ。地域に愛された伝統の味がなくなってしまうのだろうか。
J-CASTニュースBizでは各地の道の駅での対応方法などを取材した。
いぶりがっこへの影響は? 秋田県美郷町、個人農家のために共同加工所を整備
「食品衛生法」の改正が全面施行されることにより、営業許可が必要な業種に、漬物製造業が追加された。
要件としては、衛生基準を満たした施設が必要になるほか、国際的な食品衛生管理手法である「HACCP(ハサップ)」に沿った加工場の衛生管理などが必須になる。
今回、改正法の施行前から製造していた個人農家にも適用される。2024年5月末までに営業許可の取得と、食品衛生責任者の資格取得が義務付けられる。
思えば、道の駅で取り扱かわれている地元の伝統的な漬物は少なくない。秋田県なら「いぶりがっこ」、埼玉の「しゃくし菜漬け」、梅の産地・和歌山県の「紀州南高梅の梅干し」、長野県の「野沢菜漬け」などだ。
そうしたなか、各地の個人農家の対応はどうか。まずは、秋田県のいぶりがっこ。いぶりがっこは、農閑期の個人農家の収入ともなっている。
秋田県美郷町の「道の駅 美郷」の担当者を取材すると、「衛生管理の行き届いた町民が使える共同加工場を町が整備している」と答えた。こうした加工場を利用することで、個人農家は今後も、いぶりがっこの販売を続けるという。もっとも、営業許可の申請と食品衛生管理者の資格を得ることが必要になる。
ちなみに、いぶりがっこが道の駅からなくなる危惧について、担当者は「なくなることはないでしょう。共同加工場のほかにも、この経過期間中に個人で設備を設けた人もいます。道の駅としては食品の衛生が保たれてリスクの低減につながりますから」と話していた。
和歌山県の「梅干し」、長野県の「野沢菜漬け」への影響は?
続いて、梅の産地である和歌山県みなべ町の「道の駅・みなべうめ振興館」。ここに、梅干しを卸している、マルヤマ食品の担当者は製造システムについて
「梅干しは、塩をふって天日干しにした『白干し梅』と呼ばれるものを加工業者が買い取って、調味液に付け込んで一般的な梅干しを製造するかたちになっている」
と説明した。そのため、
「農家はこうした原料を販売するだけで、漬物製造の許可や衛生責任はメーカーが負っている」
と話した。
なお、道の駅で梅干しの販売がなくなるかどうかについては、
「農家さんによっては、塩だけを使った『白干し梅』を道の駅などで販売する人もいるので、そちらは影響を受けるかもしれません。しかし、一般的な梅干しはメーカーが責任をもって製造するので、なくなることはないでしょう」
と述べた。
最後に、長野県の「野沢菜漬け」の状況を調べるべく、長野県阿南町の「道の駅 信州新野千石平」を取材した。担当者は、「店内に仕入れている野沢菜漬けはすべて製造メーカーから入手しているもので、食品衛生法の改正の影響はない」と答えた。
このほか、「長野県内に流通する野沢菜漬けはメーカーから卸しているものが多く、県内でも影響を受けているところは少ないのではないでしょうか」と推察した。