厚生労働省は2024年1月24日、2023年の賃金構造基本統計調査(速報値)を発表し、フルタイムで働く労働者の所定内給与(月額)は31万8000円で過去最高額を記録した。
前年と比べて2.1%増となり、伸び率は1994年の2.6%増以来、29年ぶりの高さとなった。
しかし、年代別に賃上げ率をみると、20代と60代が突出して高く、35歳~54歳の働き盛りが低い結果となった。いったい、なぜ? 厚生労働省の担当者に聞いた。
30代後半以降の働き盛りは横ばい
厚生労働省の「令和5年(2023年)賃金構造基本統計調査速報」によると、年代別には、34歳以下の若年層と60歳以上の伸び率が大きく、19歳までが前年比3.1%増の19万円、70歳以上が7.3%増の25万5000円だった。
学歴別にみると、大学卒では、20~24歳が23万9600円(2.6%増)、25~29歳が27万2600円(2.8%増)、30~34歳が31万円(2.6%増)とアップしたのに対し、35~39歳が35万4100円(0.1%増)、45~49歳が43万900万円(0.3%増)と、ほぼ横ばい状態【図表】。
全体的に、45歳以上の給与水準が高い層は伸び悩み、50~54歳にいたっては47万3800万円(0.2%減)と、マイナスに落ち込むありさま。65~69歳が36万9200円(11.5%増)、70歳以上が37万2700万円(10.5%増)と急上昇したのと雲泥の差だ。
調査は、10人以上の労働者を雇う全国の約7万8000の事業所が、2023年6月分として支払った所定内給与を集計したもの。残業代や休日手当などは含まれない。
人手不足が深刻、何としても20代を確保したい、
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行った厚生労働省賃金福祉統計室の担当者に話を聞いた。
――フルタイムで働く労働者の平均賃金(月額所定内給与)が31万8000円と、過去最高になった理由はなんでしょうか。
担当者 やはり、昨年(2023年)の春闘の賃上げ率が前年比3.60%増と、1994年以来29年ぶりに3%台を記録したように、賃上げムードが高まっていることが大きいです。
人手不足が深刻になっているため、若い人を中心に賃金を上げる傾向が目につきます。たとえば、20代では大学卒で2.6%~2.8%増、高校卒では5.3%~5.5%増と賃上げ率が非常に高くなっていますが、これは若い人を積極的に採っていきたいという願いの表れとみられます。
――しかし、その分、子育てにお金がかかり、働き盛りでもある30代後半からの賃上げ率が低いですね。大学卒ではほとんど横ばい状態です。これはどういうことでしょうか。
担当者 速報値なので正確に分析していないため、推測の域を出ませんが、20代を手厚くして人手を確保するために、30代後半以上を相対的に抑えたとみられます。
50代前半が凹んでいるのは、就職氷河期世代だから
――それにしても大学卒の50代前半が気の毒です。賃上げ率がマイナスになっています。部長級の人々ではないですか。上の年代が急上昇しているのに、彼らだけが凹(へこ)んでいます。これはどういうことでしょうか。
担当者 60歳以上の伸び率が大きいのは、高齢者雇用を進めているからだと思われます。今回は、若年層と高齢者層に手厚い傾向が目立ちました。
50代前半だけがマイナスなのは、あくまで推測ですが、企業の間で就職氷河期世代を積極的に途中採用する動きが進んでいるためと思われます。
バブル崩壊後の1990年~2000年代に就職活動を行った世代は、現在、40歳前後~50代前半。非常に厳しい雇用状況に置かれました。厚生労働省では就職氷河期世代の支援を行っており、企業に正社員として雇用するようお願いしています。
しかし、途中入社で勤続年数が少ないため、まだ賃上げが追いついていない人が多いと考えられます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)