内閣人事局は2024年1月23日、国会での議員の質問に対する政府側の答弁を事前に官僚が作成する業務に関し、23年秋の臨時国会を対象にしたアンケートの結果を公表した。答弁を作り終えた平均時刻は委員会開催前日の25時31分(当日午前1時31分)で、23年の通常国会よりも11分早まり、議員が質問内容を伝える「質問通告」が出そろった時刻の平均は、委員会前日の18時26分で横ばいだった。
7時間5分の差
もっとも、内閣人事局の公表資料をみると、質問通告時間の分布で、(1)委員会開催日の前々日まで577件(56.5%)(2)委員会開催日の前日18時まで419件(41.0%)(3)委員会開催日の前日18時より後26件(2.5%)――だ。(1)と(2)なら、酷い残業は必要なく、(3)が問題だが、1年前は56件(6.5%)だったので、着実に減少している。ちなみに、筆者が官僚時代には、(3)がほとんどであり、(1)はまずなく、(2)でも珍しかった。
一方、政府側の問題として、最終の答弁作成着手可能時刻の平均が18時26分であったのに対し、すべての答弁作成が完了した時刻の平均は25時31分と、その差が7時間5分かかっていることがあげられる。
(3)をなくすことが先決
国会答弁作成というと、難しく時間がかかると思われるが、答えているようで既に答弁済みか実施済みのことを答えて、新たなことは何も答えないというのが基本なので、難しくない。まして、前日の18時以降の質問通告ならば新たな意思決定を政府内で行うのは不可能なので、何も答えないという答弁しかできない。今であれば、AI(人工知能)に過去の答弁を読み込ませて書かせれば簡単に答弁が作れるだろう。
こうしてみると、解決策が見えてくる。まず質問通告が著しく遅い(3)については政府側の問題でなく、通告側の議員の問題だ。しばしば党の事情で質問者が決まっていないことも少なくない。そこで(3)についてその都度議員名を公表し、必要あればその弁明を議員に行わせればいい。いずれにしても(3)をなくすことが先決だ。
その上で、(3)に対する答弁は、通告時間が遅かったことを述べたうえで原則として簡単に済ますことだ。ただし、突発事案でやむを得ない場合には臨機応変で対応したらいい。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。