若い女性が地方で働けることが、究極の少子化対策
――移住以外に方法はないのでしょうか。
熊野さん 地元に強力な企業を誘致することが一番です。山梨県の忍野(おしの)村(528万円)が4位なのは、「ファナック」という機械メーカーの存在が年収を押し上げています。先日、熊本県に行きましたが、世界最大の台湾の半導体機器メーカー「TSMC」の進出で盛り上がっていました。地元経済への波及効果は何兆円にもなるでしょう。
個人単位で考えると「移住」になりますが、企業単位で考えると「企業誘致」になります。企業誘致が難しい場合、発想を変えると、その中間をとって、地方にリモートワークの企業を設立し、都市部から仕事を請け負うという方法があります。最近、地方で大企業から仕事を請け負うアウトソース事業がさかんに勃興しています。
これは、リモートワークによって、地方が都市部から仕事を輸入するのと同じ原理になります。先ほど述べた「広域型経済」によって地域経済を潤すことと同じです。何より素晴らしいのは、地方の若い女性に仕事が増えることでしょう。これまでは、地方に仕事がないから若い女性が東京に出ていき、それを追いかけて若い男性が東京に出ていくという構図でした。
結果的に、子育てコストが非常に高い東京に若い世代が集中するから、少子化がどんどん進むのです。もう、地方にいて稼ぐよりも、都市に移住して働くほうが稼げるという仕組みを変えなくてはいけません。私たちは、そのヒントを過疎地でも年収が高い「富豪町村」に学ぶ必要があります。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
●熊野英生(くまの・ひでお)さんプロフィール
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト(担当:金融政策、財政政策、金融市場、経済統計)
1967年山口県生まれ。1990年横浜国立大学経済学部卒、日本銀行入行。同行調査統計局、情報サービス局を経て、2000年第一生命経済研究所入社。2011年4月より現職。日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事。
著書に『インフレ課税と闘う!』(集英社)、『デジタル国家ウクライナはロシアに勝利するか?』(日経BP)、『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』(文藝春秋)など。