「日本一金持ちの村」はホタテ漁で御殿を...
――ホタテ漁で「日本一の金持ち村」と言われている2位の猿払村(北海道)も、今、問題に直面しています。ホタテの主要な輸出先である中国が、福島第一原発の処理水放出問題に抗議、日本産の海産物を禁輸しており、大打撃を受けています。
そこで政府は昨年(2023年)9月、水産業への約1000億円の緊急支援を閣議決定しました。しかし、報道によると、「これまで散々中国で儲けてきた裕福な村に、補助金なんて必要ない」と厳しい声が出て、猿払村漁協にクレームの電話が来ているそうです。
熊野さん それはおかしな話です。やっかみや嫉妬は許されません。政府は猿払村もしっかり助けるべきです。猿払村は20年以上前からホタテやナマコをブランド品に育て上げ、中国への販路を開拓してきました。
そうした努力は認めるべきだし、何より、ポピュリズムによって地方の優良なビジネスをつぶしては、過疎地の経済の興隆は望めません。ホタテに関しては米国も支援を申し出ています。
――猿払村もそうですが、リポートで興味深いのは、過疎地が多い北海道の町村が上位に並んでいることです。不思議なのですが。
熊野さん 30位のうち4割以上、13町村が北海道に集中しています。いずれも農業、漁業で年収を稼いでいるところばかりです。それぞれがユニークな取り組みを行なっており、活気があふれています。
たとえば、3位の安平町は酪農が盛んで、「ノーザンファーム」があり、競走馬の産地としても有名です。個人事業主の事業所得が突出して高いところです。ここに昨年(2023年)4月、小中一貫の町立学校がオープンしました。また、未就学児への教育にも力を入れています。
2つの幼保連携型認定こども園ができ、「自然と一緒に子育てができる町」を売り出しているのです。札幌市から車で1時間、新千歳空港から車で20分の地の利を生かして、若い夫婦の移住に力を入れています。
北海道は全体として少子化と人口減少が厳しい地域ですが、産業に目を向けると、農林漁業が盛んですから、観光や農業、特にコメ作り以外の農業に目を向けると、人口減少の町村が大きく稼ぐことが可能です。