離職率の低さは「辞めるに辞められない」ためかも
またAさんによると、法定外福利は社会人経験のない就活生の目を引くようなものもあるが、社会人になると「大した価値に感じられない場合も少なくない」という。
「例えば『記念日休暇』と聞くと、学生は『この会社は社員を大切にしてくれそう!』なんて思うかもしれません。でも、社会人ともなれば『記念日休暇』なんて使わなくても、黙って有給休暇を取ればいいと思うものです」
Aさんがもうひとつ「危うい」と感じるホワイト企業の特徴は「勤続年数が長い・離職率が低い」で、辞める人が少ない方がいい会社という考え方も古すぎるという。
「辞める人が少ない会社は中途入社も少ない場合が多いのですが、これだけ世の中の変化が激しいのに生え抜きの人材ですべて対応できるなんてありえないじゃないですか。いったん辞めた人が他社で経験を積んで戻ってこられるくらい、雇用がある程度流動化している会社の方が、健全に成長していけるんじゃないですかね」
離職率の低すぎる会社は、つぶしの利かない社内業務で労働市場における価値を高められず「辞めるに辞められない人になっているのかもしれない」。それではAさんから見た「ホワイト企業の特徴」とはどういうものだろうか。
「社会人になれば、知名度よりも『会社の業績が伸びていること』が重要だと分かりますよ。そのうえで、どんな業界のどんなビジネスモデルで儲かっているのか知ること。すぐれたビジネスモデルの会社は、無理な長時間労働をする必要もなく、給料も安定的に増えていくし、そこで働く経験は後々の糧になる。正直、社会人経験の乏しい就活生の『自己分析』なんかより『企業研究』の方が遥かに大事なんです」
企業研究の方法は「有価証券報告書や決算説明会資料を見ること」。自分が受けたい会社が非上場企業でも、同じ業界の上場企業を例にすればビジネスモデルの研究はできる。
研究を基に感じた疑問を面接で質問すれば「この学生は違うな」と高評価に結びつきやすいという。事業や仕事自体に関心の高い就活生は少ないからだ。