子育てママが集う場に「お仕事スペース」
――ところで、福澤さんは別のママ友関連のリポート(注)では、横浜市のある「子育てサークル」を取りあげています。そこは、ママたちの交流の場であるだけでなく、「お仕事」の場もあり、働く意欲のあるママたちの起業や就労にもつながっている、と紹介しています。
福澤さん その「子育てサークル」は、2007年に保育士の仕事をしていた母親がつくったものです。当初は子育てに不安や孤独を感じる母親たちが集う場としてスタートしました。15年以上たった現在も、「地域の子育て世代の方にデジタル回覧板を担う」として、SNSを活用して、今や3000人以上ものフォロワーがいるほど、活動が広がっています。
最近では、閉園した幼稚園を拠点にしながら親子が集うマルシェやフリーマーケット、近隣の商店会と共同で餅つき大会を開くまでになっています。
中でも興味深い取り組みは、2022年に始まったママたちが集まってお仕事をするという取り組みです。ママたちの中には、「子ども連れでもいいなら働きたい」という人もいます。一方、子どもが大きくなったママは、なかなか「子育てサークル」に出向くきっかけがありません。そんなママたちにも来てほしいと、集まってお仕事をする取り組みを始めたのです。
結果として、いろいろな世代のママ同士が集い、作業をしながら気軽に子育てについての相談ができる場になっています。
実は、行政が用意する子育て相談の場は、子育て中のママからするとハードルが高いとする声もあるので、こうした場において雑談の延長で子育ての相談ができるのは、ママたちにとってメリットが大きいと思います。
「お小遣い稼ぎになるなら」と、ママ同士の交流の場に行く大義名分にもなりますしね。
――一石二鳥のアイデアですね。「お仕事」と言っても具体的には何をするのですか。
福澤さん 私が取材に行ったときには、地元の企業から依頼された、ノベルティーグッズの制作作業を行っていました。ママたちは手先が器用で、仕上がりもよく、企業側の評価が高いと聞きました。みなさん、口も手も動かして楽しく作業をしていました。
しかも、日払いで報酬をもらえますから、自分でプチ贅沢もできます。素晴らしいのは、この子育てサークルから子ども向けのワークショップを開くママが出てきたり、別のスキルの高いママがそのワークショップの募集チラシをデザインしたり、ハンドメイド技術を持つママが、制作物を販売したりと、ママたちのスキルを生かした活躍の場にもなっているということです。
また、イベント協賛企業やお仕事の依頼をしていた企業が従業員を募集する際に、こうした子育てママサークルに声がかかり、実際に複数の採用に結びつくということも起こっています。