企業が支払った税額は「もっと増えている」?
法人税率の引き下げについては、2015(平成27)年度から2018(平成30)年度にかけて実行税率ベースで4.88%の税率引き下げを行っている。これは、企業経営者が内部留保を活用して、投資拡大や賃上げに取り組むことを期待して行ったものだ。
しかし現実には、企業の内部留保は555兆円にまで膨れ上がり、企業が抱える現預金等も300兆円を超える水準に達している。「近年の類似の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない」とは、税制改正大綱も認めるところだ。
この点について、大和総研が2024年1月12日に公開したコラムが異論を提示している。同社金融調査部主任研究員の是枝俊悟氏による「企業業績が堅調なのに、なぜ法人税収が伸び悩んでいるのか」と題した文章だ。
是枝氏は「企業業績が堅調に伸びているにもかかわらず法人税収が伸び悩んでいるため、法人税率を下げすぎたからだ、政策減税が繰り返されたからだ、企業が節税策を講じているためだ、などと考察し、法人税率を引き上げるべきだとの主張もよく耳にする」と現在の議論をまとめる。
そのうえで「だが、実はこの間、企業が支払った税額はもっと増えている」と指摘し、その理由について「『法人が支払った所得税』が増えているからだ」と分析する。
是枝氏が注目したのは法人が支払う「所得税」だ。法人の受け取った利子や配当には法人も個人と同様に源泉徴収されているが、そのままだと法人税とともに二重課税されてしまうので、「法人が支払った所得税」は、その法人が負担すべき法人税額から控除される。
その結果、「国庫に納まる税収の名目で見ると、法人の受取配当が増えれば増えるほど所得税が増えて法人税が減る」という構図になるというのだ。