北海道夕張市はウェブサイト上で「借金時計」を公開し、公債の返還状況を随時知らせている。借り入れた再生振替特例債の残額は、2024年1月17日現在で、80億円足らず。償還終了年月は、2027年3月だ。
夕張市は2006年に財政破綻を宣言。当時、解消すべき赤字は353億円で、全債務を合わせると620~630億円に達したという。残り80億の負債を、3年で返すことができるのか。
夕張市の破綻の経緯
「借金時計」は、夕張市が抱える市債の状況を市民に分かりやすく知らせる目的で公開している。同市は財政再生団体であるため、再生振替特例債の残高とともに、各会計の市債残高を表示している。なお再生振替特例債とは、財政再生計画終了までに返済しなければならないと法律で認められた自治体の借金。
夕張市が財政破綻に至った原因が、夕張商工会議所のウェブサイトに以下のようにまとめられている。
「炭鉱閉山後の社会基盤整備」
「行政体制の効率化の遅れ」
「観光施設過大投資」
「歳入の減少」
「財務処理手法の問題」
同市はかつて石炭産業を基幹産業として発展したが、相次ぐ炭鉱災害およびエネルギー変革によって、24か所の大手炭鉱が次々と閉山。人口も2005年には1万3000人と、1960年代と比べて約9分の1まで激減した。そのため、新たな基幹産業とするため観光等の基盤づくりを短期間で仕上げたが、これが財政構造を極度に悪化させた。さらに、これら財源の大部分を地方債に依存したため、公債費が多額となり財政の硬直化の要因となった。
また、観光事業を石炭産業の代替とした「石炭の歴史村公園」を整備したことから始まり、総合観光を目指してホテルなどの宿泊施設の整備を図った。だが、長引く景気の低迷で、本来なら使用料等の収入により賄うべき経常経費と施設整備にかかる元利償還金に充てるべき収入が不足し、赤字運営となっていったという。
市債残高の減少を市民に実感してほしい
J-CASTニュースBizは、夕張市財政課を取材した。借金時計を公開した背景について、再生振替特例債の借入を機に、他自治体の借金時計を参考に、「財政再生団体となった本市も再生振替特例債をメインとして、市債(借金)の残額が確実に減っていく様子を主に市民の方に実感していただきたく」と答えた。
再生振替特例債の期限は、2027年3月だ。残り3年余りだが、「計画どおり償還できる見通しです」と答えた。根拠として、財政再生計画を策定した2009年には321億9900万円を借り入れ、翌10年に4億5300万円、11年に4億8000万円を償還。13年からは市の予算から公債費の歳出として25億円程度を充て、返還計画を立てて予算を組んできている。そのため、「計画通りに進めば2027年3月までに償還できる」と説明した。
また、借金時計では一般会計211億円、全会計231億円といった市債が表示できる。これらの償還できる見通しは、どうなのか。
市財政課は、公債費返還の予算を得るために、人件費や物件費、維持補修費などの見直しを図っていることを説明。同市が立てた2023年度の財政再生変更計画書の資料を参照しながら、公債費歳出の2029年までの計画を立てているとした。
毎年9~10億円ほど、再生振替特例債に市債の返還を積み上げており、再生振替特例債償還終了年の2027年以降も市債の返還を続けていくという。「市債(借金)の残額が多額となっていますが、総額をもとに返還計画を立てているので、こちらも計画通り進めば返還できる見通しになっている」と話していた。