「お粗末と言わざるを得ない」
報告書によると、損保ジャパンの事務分掌では、法務コンプライアンス部が取り扱う「不祥事件」とは、保険代理店等の不祥事件を指すと解釈されていた。
そのため、保険代理店兼整備工場による保険金の不正請求は「あくまで保険募集人でない整備工場の行員によるもの」なので、法務コンプライアンス部は自己の所管ではないと認識していたという。
一方で、保険金サービス部はリスク対応へのリテラシーが乏しいうえに、社内力学上の立場が相対的に弱く、ビッグモーターという重要な取引先を失いかねない営業部門に、コンプライアンスの観点で多くを求めるのも現実的ではなかった。
報告書は「損保ジャパン内で、責任をもって主体的に対応する意思及び能力を持った部署等が判然としておらず、コンプライアンス体制が機能不全を起こしていたことが、最大の制度的要因ではなかったかと思われる」としている。
とはいえ、会社にとって大きなリスクとなりかねないコンプライアンス上の問題が浮上すれば、事務分掌を超えて協議を提案する人がいてもおかしくない。この点について報告書は「人的要因」のひとつに「役職員に見られる主体性の乏しさ(縦割り思考、他責思考)」をあげている。
そして、損保ジャパンの方針決定のありかたを「お粗末と言わざるを得ない」と断じ、「当時そのことに異を唱えたり疑問を呈したりする役員が誰一人としていなかったことは誠に残念でならない」としている。