営業の意向を過度に配慮、役職員の主体性乏しい 「ビッグモーター不正」調査報告書が明かした損保ジャパンの社風

「保険金サービス部門の発言力が営業部門に比して乏しかった」

   上位幹部に問題が報告されなかった理由は、次の2つだ。

   1つ目は、保険金サービス部門においては、顧客目線で整備工場の品質を見極めることよりも「営業部門の意向を過度に配慮する傾向があった」うえ、「保険金サービス部門の発言力が営業部門に比して乏しかった」ためだ。

   2つ目は、保険金サービス部門の経験が豊かな取締役はほとんどおらず、「保険金サービス部門に現場の役職員の持ち合わせている情報や意見が経営層に伝わりにくかった」ためだ。

   いずれからも、顧客軽視、営業重視の価値観がうかがえる。売上高や市場シェアを追求するあまり、事業の中核となるはずの顧客価値がおろそかになり、営業部門の発言力が過度に強まることは、他の会社でもみられることだ。

   また、ビックモーター担当営業部においても「ビッグモーターが営業上重要な大型代理店である」ことから、ネガティブな情報を見聞きしても取り立てて経営層に伝えることをしなかったという。

   もうひとつ気になるのは、コンプライアンス部門がなぜ機能しなかったのかという点だ。これについて報告書は「内部統制システムの不備及びコンプライアンス体制の機能不全」という「制度的要因」があったとする。

   報告書は、事故車の「入庫紹介」の運用に関して、顧客被害が発生するおそれのあるコンプライアンスの重要案件ともなれば、保険金サービス企画部の担当役員が法務コンプライアンス部との合議のうえで決済し、さらには他社動向も踏まえて経営会議や取締役会にも付議して、より高次の意思決定を行うべきだったと指摘する。

   しかし、事務分掌(役割分担)が不明確であったことも災いして、こうしたシステマティックなプロセスが取られることはなかった。

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