能登半島地震で高まる「自治体アプリ」の重要性 利用者わずか1割、専門家が説く「家族と自分の命守る方法」

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   能登半島地震では虚偽情報が氾濫する一方、正確な避難経路の周知や避難場所の把握など、地元の自治体が作るアプリの重要性が高まっている。

   そんななか、NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年1月11日に発表した調査「自治体が作成するアプリの利用意向有は約7割~発災時の有効活用にために平時の利活用を~」によると、自治体アプリの利用率は1割程度であることがわかった。

   災害時の情報洪水の中から正しいものを選び、家族と自分の命を守るにはどうしたらよいのか。調査担当者に改めて自治体アプリの重要性を聞いた。

  • 災害時に役立つ自治体アプリ
    災害時に役立つ自治体アプリ
  • (図表1)自治体が作成したアプリの利用意向(モバイル社会研究所作成)
    (図表1)自治体が作成したアプリの利用意向(モバイル社会研究所作成)
  • (図表2)自治体が作成したアプリの利用意向(年代別)(モバイル社会研究所作成)
    (図表2)自治体が作成したアプリの利用意向(年代別)(モバイル社会研究所作成)
  • (図表3)自治体が作成したアプリの利用率(都道府県別)(モバイル社会研究所作成)
    (図表3)自治体が作成したアプリの利用率(都道府県別)(モバイル社会研究所作成)
  • 災害時に役立つ自治体アプリ
  • (図表1)自治体が作成したアプリの利用意向(モバイル社会研究所作成)
  • (図表2)自治体が作成したアプリの利用意向(年代別)(モバイル社会研究所作成)
  • (図表3)自治体が作成したアプリの利用率(都道府県別)(モバイル社会研究所作成)

70代では40%が利用だが、10代・20代では数%

   自治体のアプリをインストールしておくと、普段は行政からの連絡が入るだけでなく、災害時には避難マップの表示や避難場所の位置・経路を知ることができ、命を守る避難行動をとることができる。また、避難情報の更新や変更がすばやく確認できるため、迅速かつ効率的な避難行動が取れるようになる。

   モバイル社会研究所の調査(2023年11月)は、全国の15歳~79歳の男女8991人が対象だ。まず、居住地の自治体が作成しているアプリを「スマホにインストールしているか」を聞くと、インストールしている人は11%だった。また、「今後インストールしてみたい」を含め、「利用意向」のある人は合計69%だった【図表1】。今後広がっていく課題として、「認知拡大」が挙げられそうだ。

   現在、インストールして利用している人を年代別にみると、シニア層ほど高く、70代では約40%が利用している。一方、10代、20代は数%程度と極端に低い【図表2】。続いて、すでにインストールしている人に、そのきっかけを聞くと、半数以上が「広報誌をみて」と答えた。

   興味深いのは、自治体作成のアプリの利用率を都道府県別に比較したデータだ【図表3】。現在、能登半島地震で甚大な被害が出ている石川県は9%と、全国平均(11%)より低い。一方、台風の被害が多いとされる九州や四国地方は、沖縄を除き、平均を大きく上回っている。

   リポートでは、身近な避難所の確認や、離れ離れになった家族の連絡方法など、災害時に役立つ「データで見る防災ガイド」も掲載している。

若者はSNSから災害情報を取っている

   自治体アプリを災害時に役立てるにはどうしたらよいか。J‐CASTニュースBiz編集部は調査をまとめたモバイル社会研究所の水野一成さん(防災・シニア・子ども調査担当)に話を聞いた。

――「利用意向がある」が69%とありますが、実際にインストールしている人は11%に過ぎません。いざ災害が起こった時にかなり心配な数字だと思いますが、この数字をどう評価しますか

水野一成さん おっしゃる通り、利用する意向があるのに利用している人が11%に留まっているのは残念です。この理由は2つ考えられます。

1つ目は、周知が広がらないことです。以前、作成したアプリで防災無線まで届ける(音声及び文字情報)サービスまで展開されている自治体の方にも聞いたのですが、多くの市民の方に知ってもらう周知が難しいとのことでした。

もう1点は、優先度の問題かと思います。このようにアンケート調査で聞けば「使いたい」と回答いただけますが、実際インストールする手間までかけて行っていない現状があるかと思います。

――インストールしている人が高齢者ほど多く、70代で4割近いですが、若い人ほど少ないのが心配です。モバイル社会研究所が昨年(2023年)12月に発表した調査「災害時のフェイクニュース・デマなど偽情報を見分ける自信がない7割」では、10代・20代とシニア層に自信を持つ割合が高い結果が出ました。

この調査で水野さんは、「10代・20代は学校教育で防災訓練を行なった記憶が鮮明なため、防災意識が高い傾向がある」と分析しましたが、今回は、若い層の防災意識の低さが出たかたちで、真逆な印象を受けます。

水野さん こちらも以下の2点が考えられます。1つ目は代替手段です。発災時の情報、普段の行政の情報、若い方はSNSなどを利用して取得する代替手段を考えているのではないでしょうか。

また、若年層は行政への関心の低さもあげられると思います。ただ、災害発生時には一から探すのではなく、さらに確かな情報源として自治体が作成したアプリのインストールを検討頂きたいです。

インストールしたきっかけも「広報誌をみて」がダントツでしたが、推測となりますが、紙媒体の購読が多いのが高齢層のため、その結果になったと思います。また、行政への関心が高い方が広報誌を読み、インストールのきっかけになったとも推測します。

自治体アプリは情報源が確か、親と共有を!

――都道県別のアプリのインストール率も興味深いです。この数字は災害の頻度とつながっているのでしょうか。台風被害が多い九州や四国は軒並み高率ですが、沖縄は低いです。また、東日本大震災で大被害を受けた福島、宮城、岩手が平均以下であることも理解できません。各自治体の熱意の差でしょうか。

水野さん 自治体の取り組みの差だけではないと思われます、まず、過去の災害との関連が低いことから、すべてが自治体のアプリ=災害時の利用とはなっていない、つまり普段の行政の情報取得のためと考えられます。また、人口構成比やアプリの内容にも関連していると思います。

――自治体アプリをインストールすることの重要性について、特に強調しておきたいことがありますか。

水野さん 4点あります。1つはスマホのアプリの特徴であるプッシュ通知機能です。全てではありませんが、多くのアプリはプッシュ通知で情報が飛んできます。いち早く情報を手に入れられる可能性があります。

2点目は遠方の家族にもインストールして欲しいです。私自身がそうですが、親が住んでいる自治体のアプリをインストールし、重要な情報は直接親に伝えます。

3点目は平時の活用をお勧めします。特に高齢者は災害発生時に普段使い慣れていないアプリを使うことは困難を生じることがあります。

最後に情報源が確かであるということです。能登半島地震でも偽情報の氾濫が問題となっていますので、ぜひともインストールして欲しいです。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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