「お金が目的じゃないんです。お金は他のメンバーのために使ってください」
こうして採用した1人の若者を育てる過程で、Yさんはもうひとつ驚きの体験をしたのです。
Yさんは、前職の経験からスタートアップ企業が成功し、優秀な若者が経営幹部となり、年収1000万円を得られる現場も見てきました。だから、採用した新人の気持ちをさらに奮い立たせようと、「この会社でも、そんな明日は夢ではない!」と話したのです。
すると、意外にも...新人の彼はこう語ったのです。
「いいえ。私は1000万円もいりません。600万円もいただければ十分です。そのほかは、会社やメンバーのために使ってください。私がここに就職したのは、お金が目的じゃないんです。酒造りへのビジョンに共感したからです。
実は、大手食品メーカーからも内定をもらいましたが、自分が望む道でキャリアを積めるか確信がもてませんでした。でも、ここなら明確な目標に向かって、やりがいある仕事に打ち込める。そして、少しでも早く一人前の醸造家になり、世界に打って出る仕事と会社に貢献したいんです。
でも、それは一握りの人の力では叶わない。一人でも多くの仲間や後輩を育て、会社や業界を盛り立てる資金に使ってください」
Yさんは、彼の志の高さに感動し、あらためて素晴らしい仲間を得られたことを心底喜びました。そして、この真っ直ぐな若者たちと力を合わせ、しっかり自分たちの夢を実現しようと、決意を新たにしたのです。