若手経営者が継いだ「経営難」地方中小企業に、2000人の新卒が殺到したワケ

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空回りした改革からの猛省

「こんなことではダメだ! 付加価値がある酒造りに早く転換しなければ」
「硬直化した上意下達の組織を、よりフラットに改めなければ」
「仕事のマニュアル化を進め、ノウハウを共有できるように...」

   新進気鋭のベンチャー企業で活躍してきたYさん。古い経営と現場マネジメントの改革が急務とばかりに、幹部へのビジネスハウツー伝授に躍起となりました。

   ところが...。

   古株の社員からは反発の声があがり、離反退職する者も出始めました。社員たちにも会社を何とかせねばとの課題意識はあるものの、若手経営者の拙速な手法に気持ちが追い付かず、改革はすっかり空回りしていたのです。

   Yさんは、しばらく悩みました。

「気持ちが伝わらなければ、いくらハウツーばかり語っても、受け入れられない」
「心が通じ合い、人として認め合えて、初めてノウハウやテクニックが生きるのがモノづくりの現場だ」

   Yさんはまず自分の姿勢を正す必要性を痛感しました。自分自身が酒造りに心を込めること、酒蔵の真価をしっかり考え、みんなと共有する所から始めなければ...と猛省したのです。

   Yさんは、酒蔵に魅力的なビジョンを持たせることから始めました。

「日本には、世界に誇れる優れた文化がある」
「日本の食は、世界が高く評価するような素晴らしいものだ」
「日本酒は、日本の風土が培った日本にしかない素晴らしいものなんだ」

   日本酒という伝統の品のよさ、モノづくりのよさを復権し、とことん磨きたい――。それはヨーロッパのワインのように、日本の土壌や文化に根ざし、かつ世界に向けて発信できる優れたものであるはずだ、と。

   そのためには、どうしたらいいのか。Yさんは思考を深めます。

・酒造りの伝統や技は守る一方、悪しき旧習は壊す必要がある。
・上意下達の組織や、若者につらい我慢を強いる働かせ方はあらためる。
・職人を季節的な出稼ぎで賄うシステムを脱し、直接雇用とする。同時に、職人気質でブラックボックス化していた仕事の透明化を進め、次世代人材を育成する。

   この段階では、会社として目指すべき姿もクリアになっていきました。

「酒造りに携わる人は、だれ一人歯車であってはならない! 一人ひとりの思いを大切にしながら、自分らしく働けること」
「仕事が輝かないで、人生が輝くはずはない」

   目標は「マネジメントができる杜氏=醸造家づくり」だ!

   Yさんは、酒蔵のパーパス(存在意義)を打ち出し、かつ、次世代の醸造家を育て上げられる会社づくりを目標に掲げたのです。

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