能登半島地震、被災者を食い尽くす悪徳商法の手口 「火事場泥棒」は2年後にも襲ってくるぞ!

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   甚大な被害を出した能登半島地震。2万人近くが避難生活を送っている被災地周辺に、人々の不幸を食い物にする悪徳業者が横行している。

   国民生活センターは2024年1月12日、「能登半島地震に便乗した詐欺トラブルにご注意」という警鐘を鳴らすリポートを発表した。

   「火事場泥棒」の悪らつな手口から身を守る方法を調査担当者に聞いた。

  • 能登半島地震の被災地、石川県輪島市(写真:AP/アフロ)
    能登半島地震の被災地、石川県輪島市(写真:AP/アフロ)
  • (図表1)あなたの保険金が狙われている(国民生活センター提供)
    (図表1)あなたの保険金が狙われている(国民生活センター提供)
  • (図表2)都道県別に被害相談が急増する地域と災害の関係(国民生活センター提供)
    (図表2)都道県別に被害相談が急増する地域と災害の関係(国民生活センター提供)
  • 能登半島地震の被災地、石川県輪島市(写真:AP/アフロ)
  • (図表1)あなたの保険金が狙われている(国民生活センター提供)
  • (図表2)都道県別に被害相談が急増する地域と災害の関係(国民生活センター提供)

「雨漏りを修理してもらったが、さらにひどくなった」

   国民生活センターによると、地震発生から10日余り、さっそくこんな事例が寄せられている。

【事例1】若い男性から携帯電話で「市が能登半島地震の義援金を集めている」という電話があった。休日であったことと携帯電話からであったことから不審に思い「別で義援金を送っている」と返答した。
市が義援金の窓口になっているのか。電話で義援金を募ることはあるのか。(四国地方の自治体からの情報提供、電話を受けたのはグループホーム)
【事例2】「元旦に起きた地震の地域に送る物を集めている。今日そちらの地域を回っているので、訪問していいか。会社なので支援品を集めて送ることができる」と電話がかかってきたが、怪しいと思って断った。(関東地方の60歳代・女性)

   こうした事例は「義援金」「支援品」をめぐる詐欺商法だが、過去のケースでは、地震や台風、豪雨などの災害直後には、必ず悪徳商法が横行する。

   まず、多いのが損壊した家屋などの修繕をめぐる、強引な契約トラブルだ。こんな事例が代表的だ。

「認知症の父が来訪した工事業者に勧められ、不要な屋根修理契約をしてしまった」
「台風で自宅の屋根瓦がずれ、見積もりのつもりで業者を呼んだら、屋根にビニールシートをかけただけで、高額な作業料金を提示された。仕方なく支払った」
「日に3~4回訪問され、屋根の吹き替え工事契約を迫られた」
「屋根の無料点検後、『このまま放置すると雨漏りする』と言われ、高額な契約をさせられた」
「雨漏りを修理してもらったが、さらにひどくなった」

   もう1つ多いのが、「損害保険を使えば負担なく修理ができる。こちらで全部代行する」と持ち掛け、代行手数料をとる手口だ。災害で特に壊れた箇所がないのに、ウソの理由で保険金請求をする場合もあり、知らない間に本人も詐欺に加担してしまう【図表1】。こんな事例が代表的だ。

「『損害保険で雨どいの修理ができる』と業者の訪問を受けた。せっかくなのでドローンを使って屋根の撮影もしてはどうかと言われ、お願いした。不安になったので断りたいが、業者と連絡が取れない」
「3年前に起きた災害の被災地調査員を名乗り、保険の請求期限まで半年を切ったので、保険金請求のためのサポートをすると言われ、契約したがクーリング・オフしたい」
「台風の後片づけをしていたら、業者が来訪し、『損害保険を使って無料で雨どいの修理ができる、経年劣化で壊れたものも保険でできる』と言われた。不審だ」
「台風で雨どいが壊れ、外壁もはがれた。『火災保険で修理できる』という業者が突然来訪し、保険請求手続の代行と住宅修理を依頼したが、やめたい」

手書きの誤字脱字だらけのウソのチラシ

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の神辺さんに話を聞いた。

――事例の義援金詐欺以外のトラブル相談も、国民生活センターに入っているのですか。

神辺さん 当センターに届くまでは時間差があり、氷山の一角ですが、知らない人間が突然やってきて、「屋根が壊れている。20万円で修理をやってやる」と言われたそうです。屋根を見ても壊れている風には見えず、信用していいのか、という相談です。

もう1つは、自分から壊れた屋根を直すために、ネット検索で修理業者を探して契約した。しかし、「屋根の修理に数百万円かかる」と言われて、それなら丸ごと屋根を取り換えたほうがいいと思い、解約しようとした。すると、「違約金は半額だ」と言われたというのです。後で書面をよく見たら、工事をしない場合は契約金の半額を支払うと書かれていた、というものです。

――それはかなり悪質ですね。

神辺さん 違約金にしろ、保険料の代行手数料にしろ、工事をしない場合は半額を要求するというパターンは過去にも多くあり、珍しくありません。

たとえば、2022年の雪害地域の例では、業者の手口はこうです。業者が訪れ、雨どいの写真を撮り、「先日の雪で壊れている。火災保険を使えば追加費用なしで修理できる」と修繕修理を勧められた。保険料の半分を業者が受け取り、残りで修理するというもの。

しかし、そもそも雨どいが壊れているように見えないので、解約しようとすると、保険料の半分の額の違約金を請求されたというものです。

――能登半島地震の場合、悪徳業者は被害が一番甚大な輪島市周辺より、比較的被害が軽く、住宅の修繕が必要になる富山や新潟に押しかけてくるという情報がありますが。

神辺さん たしかに、大勢の人が避難して、日々の生活が成り立っていない能登半島地域より、日常生活を取り戻している新潟・富山地域の人々が狙われる可能性は大きいです。

しかし、能登半島でも今回の地震の先触れといわれる2023年5月の「石川・能登群発地震」(震度6強)の時は、大勢の悪徳業者が押しかけました。

「屋根の修理と称して、数千円のブルーシートを10万円以上の高額で売る業者が市内を徘徊している」「『震度6強の場合に、損害保険会社からお見舞金が出る』という手書きの誤字脱字の多いチラシを渡された」「チラシの男から『損害保険申請のサポートをする』と勧誘された」といった通報が相次ぎました。

悪徳業者は、2年ごとに全国被災地を巡回する

――呆れた連中ですね。こうした被害はいつまで続くのでしょうか。

神辺さん 地震直後だけではありません。2年以上たってから全国の災害被災地を巡回する悪徳業者が多くいます。彼らの手口は「保険金を請求できる権利は3年で消滅します。2年半前の災害の保険金請求期限が迫っています」と勧誘して回っているのです。

国民生活センターで、2017年度から2021年度までに全国の47都道府県から寄せられた「保険金詐欺被害」や「住宅修繕被害」の相談件数を調べた結果、5年間の平均値の2倍以上の相談件数があった地域は、すべて地震、台風、豪雨、豪雪の災害に見舞われていたことがわかりました。

【図表2】はその調査結果の一部です。赤色の道府県は、2018年度に2倍以上の被害相談が出た地域で、それぞれ、北海道胆振東部地震、大阪府北部地震、福井地方豪雪、西日本豪雨、台風21号・24号の被災地域です。悪徳業者が大挙して被災地を食い物にしている証拠です。

怖いのは、こうした地域が2年後に再び狙われることです。2年後には2倍とまではいきませんが、被害が1.5倍ほどに増える傾向が見られます。

――悪徳業者から身を守る一番効果的な方法は何でしょうか。

神辺さん もう、その場では絶対に契約しないことに尽きます。連中は「放っておくと、家が崩れるぞ!」などと脅してきますが、決して焦らず、必ず複数の業者に見てもらい、見積もりをとることです。中には4人組に4時間以上も粘られたというケースもありますが、絶対に根負けしてはダメです。その場で行政に電話連絡しましょう。

気軽に消費者ホットライン「188」(イヤヤ!)に電話してください。国民生活センターでは「能登半島地震関連 消費者ホットライン」を開設しました。0120-797-188(フリーダイヤル・通話料無料)です。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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