プロ野球西武は2024年1月11日、フリーエージェント(FA)でソフトバンクに移籍した山川穂高内野手(32)の人的補償として甲斐野央投手(27)を獲得したことを発表した。山川の人的補償を巡り一部報道で和田毅投手(42)の名が挙がり大騒動に発展。甲斐野の移籍で一応の決着をみたが後味の悪い結末となった。今回の騒動に関して元西武コーチの橋上秀樹氏(58)はJ-CASTニュースの取材に、自身の経験を元に独自の見解を語った。
「西武が和田投手に人的補償を求めないと思っていたのでしょう」
山川の人的補償を巡り日刊スポーツ電子版が1月11日午前、西武が和田を獲得する方針を固めたと報じた。球界に激震が走り、インターネットで様々な憶測が飛び交う中、西武は同日午後に公式サイトで甲斐野の獲得を発表。日刊スポーツの報道とは異なる甲斐野が人的補償に指名され、野球ファンはさらなる混乱に陥った。
16年から3年間、西武のコーチを務めた橋上氏は「あくまでも和田投手の人的補償報道が正しいとした場合ですが」と前置きした上で自身の見解を語った。
「西武のチーム事情から考えて、ソフトバンクは西武が取りたいポジションのプロテクトを厚くするという戦略があったと思います。西武が欲しがるとしたらどこかということを考えた時、西武が打てないチームだから打者に行くのか、それともピッチャーなのか。実際のところは分かりませんが、西武は比較的に先発ピッチャーが揃っているので、ソフトバンクからしてみれば、先発で年齢が高く、高額な年俸の和田投手をプロテクトリストから外しても西武が和田投手に人的補償を求めないと思っていたのでしょう」
西武にとって和田を獲得するメリットは2つあったと指摘し、次のように解説した。
「プロテクトから外れている野手を取ったからといって飛躍的に攻撃力が上がるわけではない。そうなると選手ひとりで飛躍的に変わるのはピッチャー。本来ならばチーム事情から中継ぎピッチャーが第1候補だったのでしょうが、先発ピッチャーを取れば現有の先発ピッチャーを中継ぎに回すことも可能なので、そういったことを含めて幅広く良いピッチャーをという所だったと思います。和田投手はローテーションを回るピッチャーなので、西武にとってみれば単純に相手の戦力を削ぐということと、チームの先発ローテーションの一角に入ってもらうという2つのプラス要素がある」
「周りから見ればソフトバンクの失態に見える」
さらに「人的補償選手が和田投手から甲斐野投手に代わったという報道が正しければ、チームによってはフロントの責任問題に発展しかねない問題だと思います。周りから見ればソフトバンクの失態に見える。逆に西武にしてみれば山川選手がソフトバンクに移籍したことは大きな痛手だが、甲斐野投手を獲得できたので御の字だと思います。実働年数などを考えると、和田投手以上にプラスをもたらすと思います」との見解を示した。
甲斐野は東洋大から18年ドラフト会議でソフトバンクに1位指名されて入団した。ルーキーイヤーの19年は65試合に登板して2勝26ホールド。中継ぎとしてプロ通算7勝8敗41ホールド11セーブ、防御率3.43をマークした。
橋上氏は「おそらくソフトバンクにいた時よりも大事なところを任されるでしょうからやりがいはあると思います」とし、「西武の中継ぎを考えればセットアッパーや1番後ろという可能性もある。外国人ピッチャーを補強するとなれば別だが、何も問題がなければ守護神、セットアッパーを担うと思います」とした。