大東建託は2024年1月10日、「コンシャスな街ランキング2023<全国版>」を発表した。全国の20歳以上の男女を対象に2019年から5回にわたって調査した、延べ約80万人の回答を集計したものだ。
2位の東京都港区、3位の大阪市北区をおさえて4年連続の1位となったのは、沖縄県中頭郡(なかがみぐん)北谷町(ちゃたんちょう)。同社「住みここちランキング」でも33位に入っている自治体だが、どんなところなのだろうか。
「仕事」と「生活」を柔軟に統合した街を評価
調査元によると「コンシャスな街」とは、普通に暮らす街の住みここちではなく、仕事と生活を柔軟に統合した「ワークライフインテグレーション」を志向する人々にとっての「多様な人々がいて刺激的な街」「出会いとチャンスがある街」と定義されている。
またコンシャスな街は「自分の可能性を試したい、起業したい、ネットワークを拡げたい」と考えている人にとって住みここちのよい場所である、としている。調査結果とともに公開された北谷町居住者のコメントは、以下の通り。
・多様性があり観光名所もあるため、たくさんの観光客で盛り上がるとてもいい地域。異国性あふれる素敵な街。(41歳既婚女性・専業主婦)
・観光スポット、商業施設、スーパー、居酒屋、公園、ギャンブル施設、あらゆるものが揃っている。(37歳既婚男性・営業職)
・観光地でオシャレな洗練された町。チェーン店なども多く国道に近い。大型商業施設(が)ある。(31歳既婚女性・営業職)
・おしゃれな街並みで、主要施設やスーパーなどもたくさんある。(48歳既婚男性・管理職)
・活気があるし、海も近いし、飲食店も充実している。(42歳既婚女性・アルバイト)
「観光」「おしゃれ」といった非日常的な要素とともに、「スーパー」「公園」など日常生活に便利な環境も揃っていることが分かる。地図を見ると、町内にはイオン北谷ショッピングセンターのほか、国道58号線沿いにはロードサイド店舗が並んでいるようだ。
米軍由来の「アメリカンテイスト」の街並み
5回の調査結果を合計して4年連続、というカウントが気になるが、「北谷町」には仕事を中心に刺激と出会いがあることは確かなようだ。「港区」を超える場所があること自体が驚きだが、いったいどんなところなのだろうか。
北谷町について調べてみると、3つの魅力があるようだ。1つ目は「異国情緒漂う街並み」。沖縄本島中部の西海岸に位置する北谷町にはキャンプ・フォスターや嘉手納飛行場など4つの米軍施設が町の総面積の52.3%を占めており、輸入雑貨店やレストラン、バーなどアメリカンテイストの街並みが広がっている。
米軍飛行場跡地に作られた美浜タウンリゾート「アメリカンビレッジ」は、1998年から施設が順次開業し、2004年にほぼ完成。2003年には年間来客数が延べ830万人にのぼるほどの人気を集めた。
2つ目は「美しいビーチとマリンアクティビティ」。北谷町は東シナ海に面し、白い砂浜や透明度の高い海は観光客に人気。沖縄有数の夕日スポットとして有名なアラハビーチやサンセットビーチがあり、シュノーケリングやダイビング、ウェイクボードやサーフィンなどのマリンアクティビティも盛んだ。
3つ目は「沖縄の食と文化」で、沖縄そばやタコライスといった定番グルメのほか、アメリカンな料理も豊富に揃っている。琉球舞踊や三線演奏などの沖縄伝統文化を体験できるイベントも開催されているという。
産業としては第3次産業が主で、宿泊業や飲食業、物販業やマリンアクティビティといった「観光業」「米軍関係ビジネス」のほか、MICE(Meetings, Incentives, Conventions, and Exhibitions)関係の誘致にも力を入れているという。
平均年齢の若さ「全国1位」が強みに
北谷町のウェブサイトによると、町内は「沖縄県内でも"賑わいのあるエリア"として高い評価」を受けているというが、東京23区で平均年収が最も高い東京都港区や、梅田・北新地・堂島などの繁華街を擁する大阪市北区とは、かなり異なる性格の街であることが分かる。
一方、沖縄県全体を見ると、近年ではIT分野で企業誘致やスタートアップが盛んになっており、従来の観光業一辺倒からの脱却を図っている。
沖縄県の「企業立地ガイド」によると、沖縄県内の情報通信関連企業数は、2015年の762社から2021年には912社へと約2割増加。県外からの立地企業数も501社にのぼり、約4万人の雇用を生み出す一大産業となっている。
同ガイドは、企業が沖縄県に立地すべき理由として、飛行機で4時間圏内に人口21億人を抱えるアジアの巨大マーケットを擁する「沖縄の地理的特性」や「国際物流+国際情報通信、2つのハブ」であることをあげている。
また、平均年齢の若さ全国1位など「豊富な若い労働力&優秀な人材」のほか、補助金や助成金などの「手厚い支援メニュー」、高率の所得控除などの「経済特区における税制優遇」といった金銭面でのメリットも押し出している。
さらに「リゾートとビジネスの両立」を図ることができるとアピールしており、「ワークライフインテグレーション」に近い町といえるのかもしれない。