携帯電話大手4社が、スマホの料金プランと同時に提供しているポイントプログラム。どこの重視度が高く、人気なのだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2023年12月22日に発表した「大手4キャリアユーザーのポイントプログラム利用に関する調査」によると、「楽天モバイル」の一人勝ちの結果となった。
いったいどこが魅力なのか、そして上手なポイ活方法は? 調査担当者に聞いた。
楽天がダントツ、次いでdocomo、SoftBank、auの順番
MMD研究所が調査した、大手4社のポイントプログラムは、docomoが「dポイント」、auが「Pontaポイント」、SoftBankが「PayPayポイント」、楽天モバイルが「楽天ポイント」だ。大手4社のユーザーには、オンライン専用プランとキャリアサブブランドの利用者は含んでいない。
MMD研究所の調査(2023年10月24日~30日)は、20歳~69歳の大手4社のユーザー1万2474人が対象。予備調査を行なって全体の傾向を調べた後、大手4社ユーザー2000人(各社500人ずつ)を選び、本調査を行なって各ポイントプログラムの利用方法などを詳しく聞いた。
まず、1万2474人にメイン利用しているキャリアのポイントサービス獲得・利用の重視度を聞いた。「とても重視している」と「やや重視している」を合せた重視度は、全体で72.3%となった。個別のポイントサービスをみると、重視度は楽天モバイル(88.4%)が最も多く、次いでdocomo(73.1%)、SoftBank(67.6%)、au(66.0%)の順【図表1】。
続いて、予備調査から抽出した大手4キャリアユーザー2000人に、ポイントサービスの貯まりやすさを聞くと、「貯まりやすい」と回答したのは、楽天モバイル(73.2%)が最も多く、次いでdocomo(44.8%)、SoftBank(37.0%)、au(34.8%)となった【図表2】。
こうしてみると、楽天モバイルの一人勝ちのようだ。楽天モバイルといえば、2023年12月1日に同社独自のポイントプログラム「SPU」(スーパーポイントアッププログラムを改定したばかり。「楽天カード」の基本のポイント還元率は、カードのランクに関係なく一律1%で、これをベースに楽天の各種サービス利用状況に応じて、「楽天市場」での「楽天カード」を使った買い物のポイントがプラスされていた。
それが、大幅改定によって、楽天モバイル契約者はポイントが貯まりやすくなる一方、各サービスの獲得上限ポイントの引き下げが多くなったため、これまで積極的にポイントを貯めてきた、その他のユーザーにとってはマイナスが多いシステムになった。
調査では、楽天モバイルのユーザー500人にSPU改定に対する意見を聞いた。「満足」が60.4%、「不満」が22.2%という結果だった【図表3】。
楽天とdocomoはわかりやすい「ネーミング」
J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。
――調査結果では、キャリア別のポイント重視度は楽天がダントツの1位になり、2位docomo、3位SoftBank、4位auという順番になりました。楽天の圧倒的1位は、やはりポイント還元率が高いということでしょうか。こういう順番になったのは何が影響しているのでしょうか。
調査担当者 2023年7月に「経済圏のサービス利用に関する調査」を行なって、「最も活用している共通ポイント」を聞いていますが、やはり「楽天ポイント」が2位を2倍以上引き離したダントツ1位になっています。2位以降の順位も今回の調査と同じ結果が出ています。
今回の調査は、ポイントの重視度と貯まりやすさが中心ですが、キャリアのポイント利用について聞いているため、ポイントの活用度合いが他社より断然高い「楽天モバイル」が強いのは納得できるかと思います。
2位以降の順位については、「ネーミング」が関係しているのではと考えます。楽天モバイルのポイントが貯まるサービスは「楽天○○」、docomoのサービスは「d○○」と、通信キャリアの名前が付き、ポイントが貯まることをわかりやすく連想させています。
ところが、SoftBankの「PayPayポイント」、auの「Pontaポイント」は実際にサービスを使う時に初めて経済圏内のサービスであることを意識することになります。こうしたネーミングの差が、興味関心や重視度の違いにつながり、この順位になったのではないでしょうか。
――なるほど。非常に面白い見方ですね。楽天モバイルの場合は、そのものズバリのネーミングという点も強いようですね。過去の調査で、順番の変化はありますか。
調査担当者 2023年7月の「経済圏の調査」での楽天経済圏の強さがうかがえますが、今回の調査でも楽天モバイルユーザーは通信サービス選びの軸にポイントの貯まりやすさなどを考えていることが分かりました。
一方、楽天以外のキャリアでも、ユーザーが共通ポイントを中心に「経済圏」を意識し始めている傾向が出ています。通信事業が先行しているdocomoやSoftBank、auが、収益拡大を見込んで決済などの非通信事業の領域を拡大するためにポイントプログラムに注力していることもあげられます。
2023年7月の「経済圏の調査」でも、経済圏を意識する度合いで楽天が減少しているのに対し、docomoとSoftBankがわずかながら増加していることが分かります。
――追われる立場の楽天ですが、今回の調査では、特別に楽天モバイルの「SPU」(スーパーポイントアッププログラム)の改定について、楽天ユーザーに聞いていますね。「満足」という意見が6割、「不満」が2割という結果をどう評価しますか。楽天の狙いは当たったのでしょうか。
調査担当者 SPU改定で、モバイル契約者はダイヤモンド会員と非ダイヤモンド会員の区別がなくなり、一律で4倍のポイント付与率となり、楽天モバイルユーザーへの恩恵が分かりやすい形となります。
しかし、毎月の付与上限が、これまでダイヤモンド会員が7000ポイント、非ダイヤモンド会員が6000ポイントだったところが一律2000ポイントになります。ほかの楽天経済圏サービスを複数利用していて付与率があがるように働きかけていたユーザーにとって、上限が設けられたことが「不満」と捉えられているとも考えられるかと思います。
ただ、「満足」が6割という結果は、楽天モバイルユーザーからも評価を得ていることが分かり、新規ユーザーの獲得に向けて結果的にプラスの方向に進んでいくのではと考えます。
いろいろな経済圏内サービスを複数利用
――上手な「ポイ活」の方法があれば、アドバイスをお願いします。また、今後の携帯大手のポイント事情はどう変わっていくでしょうか。
調査担当者 私は「楽天ポイント」、友人の1人は「dポイント」をメインに貯めており、それぞれが提供する通信キャリアを利用していますが、いろいろな経済圏内のサービスを複数利用するようにしています。
1つのアカウントに登録していれば、自動的にアカウント情報が連携され、ポイントが貯まるシステムがポイ活初心者としてはお得にサービスを享受できるのが魅力に感じています。
友人の中にも、キャリアはdocomoを使っているが、ポイントは楽天ポイントを貯めているなど経済圏に絞らない人もいますし、決済の枠になりますが、SMBCグループが提供する「Olive」を活用して決済や金融関連の情報を1つにまとめてVポイントを貯めている人もいます。
今回の調査ではポイント重視度、貯まりやすさ、ポイントプログラムの会員ランクに対する意識の高さのどれをとっても、楽天モバイル、docomo、SoftBank、auの順に意識の高さがうかがえました。
しかし、各社が今後新しいユーザーを取り込むにあたって、経済圏内でのクロスユースを促したり、既にいる経済圏からの移動ではなく併用したりという形などで、新規ユーザーの獲得が見込めるとも思います。。
楽天以外の3キャリアが、どのようにユーザーにポイントを意識させていくかが今後の鍵となると考えています。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)