三重県伊勢市内の伊勢神宮の内宮近くにある土産物店が、内宮そばを流れる五十鈴川(いすずがわ)にお賽銭を投げ入れないでほしいと、X(旧ツイッター)上で呼びかけている。
お清めの場所を穢(けが)しており、回収するのも大変な作業になることを理由に挙げた。伊勢神宮でも、「手を洗って清める場にはふさわしくないでしょう。素朴な感情でやっていると思いますが、もう少し深く考えてほしい」と取材に話している。
「なによりこの寒い中回収するのがとても大変です」
X上で注意喚起をしたのは、名物の神代餅でも知られる「勢乃國屋(せのくにや)」だ。澄んだ川底にたくさんの小銭が見える写真を2024年1月9日に投稿し、この日の五十鈴川だとして、こう訴えた。
「初詣のお客さんがお金を投げ入れたようですが、ここにお金を投げ入れても意味がないうえにお浄めの場所を穢してしまうのでやめましょう。なによりこの寒い中回収するのがとても大変です」
その代わりに、五十鈴川のすぐ隣にある川の守り神「瀧祭神(たきまつりのかみ)」にお参りすることを提案した。「正宮に詣でる前に瀧祭神を参拝すると、天照大御神に願い事を取り次いでくれるとする俗信があります」という。
お正月や年末年始は毎年このような感じだといい、実際、10年以上前からX上では、川への投銭を嘆く声が出ていた。
投稿の写真では、投銭回収用とみられる網のネットが川底に張ってあるのが見える。このことを他のXユーザーから指摘されると、「今もお正月だけはネットを張っています」「ネット張っても水には入りますね。ネットなければ回収が大変すぎます」と説明した。
「これは昔からなのですが毎年この状態なので五十鈴川にはお賽銭するものだと思っている人がたくさんいます。とくに子供なんてこれみたら自分もお賽銭投げたくなります」
投銭するのは、ほとんど日本人だといい、川に投げ入れないマナーについて、「少しでも知っていただけるとありがたいです」と望んでいた。
「五十鈴川に投銭をしないで下さい」の掲示はあるけれど
写真を投稿した勢乃國屋の担当者は1月11日、J-CASTニュースの取材に対し、五十鈴川の川べりで手をお清めする「御手洗場(みたらし)」で撮影したことを明らかにした。
この場所には、「五十鈴川に投銭をしないで下さい」といった掲示がされている。「他でも投銭はされていますが、ここが一番多いですね。掲示には気づいている人も多いと思いますが、川底に小銭が見えるので、つい投銭をしてしまうのではないですか」と担当者はみていた。
伊勢神宮を統括する神宮司庁(伊勢市)の広報室では11日、五十鈴川の投銭について、取材にこう説明した。
「川を渡ることで身を清めていましたので、神宮では、清らかさを重んじています。昔は、内宮に手水舎はなく、川の水で手を洗って清めていただいていました。御手洗場は、投銭をするための場所ではありません。賽銭をあげる場所は他にありますので、そちらの方に行っていただきたいですね」
神宮では、川の水をきれいに保つため、上流の山一帯を所有地にしているという。
以前から、川に投銭をしないでほしいと意思表示しているが、なかなか投銭がなくならない理由については、こう話した。
「誰かがやってしまうと、やりたくなるのが人情なのでしょう。しかし、手を洗って清める場には、投銭はふさわしくないと思っています。素朴な感情でやっていると思いますが、もう少し深く考えてほしいと思っています」
参拝客が集まる季節になれば、川底にネットを張っているとしたうえで、こう話した。
「ネットを張るだけでは、そこからはみ出てしまう硬貨もたくさんあります。職員が川に入って可能な限り集めていますが、回収するのも大変な作業だと聞いています。神宮のよい雰囲気を感じて、誰かに迷惑をかけないよう、清々しい気持ちで参拝していただきたいですね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)