大河ドラマ「光る君へ」で描かれた下級貴族の就活 藤原為時がありついた仕事は「非正規雇用」だった!?

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   2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」。主人公は「源氏物語」作者の紫式部で、主演は俳優の吉高由里子さん(35)が務める。

   第1回(1月7日放送)では、幼少期の紫式部とその家族が登場。紫式部の父・藤原為時(岸谷五朗さん=59)がなかなか任官されず、仕事を得るのに苦労する様子が描かれた。

  • 紫式部
    紫式部
  • 吉高由里子さん(2012年撮影)
    吉高由里子さん(2012年撮影)
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  • 吉高由里子さん(2012年撮影)

「せっかく官職を得ても、4年後には失職」

   第1回では貞元3(978)年の正月に行われた「除目」(作中では「天皇、大臣と参議以上の公卿によって行われる人事の会議」と説明)において、為時が官職を得られず、番組終盤でやっと皇太子の漢文の講師として正式な官職ではなく、右大臣の藤原兼家(段田康則さん=66)に雇われるシーンが流れた。それは現代の「非正規雇用」のような不安定な立場だったのか。

   J-CASTニュースBiz編集部の取材に対し、平安時代の貴族文化に詳しい神奈川大学日本常民文化研究所の繁田信一氏は、除目は年に2回行われていたと明かす。併せて、作中では為時の身分を表わすべく「下級貴族」という言葉が出てきたが、「メディアではかなり雑に扱われているように思われます」と指摘。細分化して理解すべきと、以下の分類を示した。

「上級貴族」:一位から三位の位階を持つ人々
「中級貴族」:四位もしくは五位の位階を持つ人々
「下級貴族」:六位以下の位階を持つ人々

   また、官職の任期について繁田氏は、「ほとんどの官職は、任期が4年と定められています。したがって、中級貴族・下級貴族のほとんどが、せっかく官職を得ても、4年後には失職することを心配しなくてはいけませんでした」と、その身分の不安定ぶりに言及。

「除目が毎年行われたのは、何かしらの官職が任期満了になって後任を決めなければならなかったからです。そのため、官職に就けていない人々からすれば、毎年、官職を得るチャンスがあったということです」

とも説明した。

任官されていない貴族は「予備役」

   では「任官されていない貴族」とは、そもそも、どんな身分なのだろうか。

「官職を持たない貴族たちは、『散位』と呼ばれます。待機状態の身ということになります。軍隊の予備役に近い感じです」

   ドラマの中で為時は、兼家から禄(給料)をもらう形で花山天皇の東宮時代・師貞親王の漢文の講師を担当することになったが、これについては「まるきりのでたらめです」と断言。ドラマで準主役たる藤原道長(柄本佑さん=37)と紫式部を「少しでも近付けるためのフィクションですね」と手厳しい。

「花山天皇は、兼家にとって、邪魔で邪魔で仕方のない存在でしたから、兼家が花山天皇のために何かしら尽力することなどあり得ません。また、為時は、兼家などとは無関係に、花山天皇の側近の一人でした」

   一方、任官されていない貴族が兼家のような有力貴族に雇われるというのは、よくあることだったのだろうか。繁田氏いわく「史実です」とのこと。

「下級貴族たちの大半は、朝廷の官職に就くのではなく、上級貴族や中級貴族に『家司』として仕えていました。『家司』というのは、現代的に言えば、執事です」

   最後に、下級貴族含め、平安時代の貴族はどのような方法で給料を受け取っていたのだろうか。

「朝廷が官人たち(貴族たち)に払う給料は、本来は、絹・布(麻布)・綿(コットンではなく真綿)・鍬(くわ=鉄製)などの物品というかたちでした。銭(銭貨)ではありません」

と繁田氏。ただ、これが前提だったとしつつも、紫式部が生きていた平安時代中期になると「コメに換算して、コメで支給されていました」とも。「もらう側の貴族たちからしても、鍬などもらっても仕方ないですから、コメの方がよかったでしょうね」と、その心中を察した。

(J-CASTニュースBiz編集部 坂下朋永)

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