先行き不透明な時代、社会を前向きに変えていく人が必要だ! 広島・叡啓大学の「実践的」カリキュラムに、有信睦弘学長が抱く「絶対の自信」

提供:広島県公立大学法人 叡啓大学

   いま、世の中の変化のスピードがあまりに速く、社会そのもの、ビジネス環境、それから個人の働き方など、あらゆるものが複雑になっている。

   将来の予測が難しく、先行き不透明なこの時代を、若者は悩ましく思うか。あるいは、無限の可能性を前に、ワクワクしているか――。広島県公立大学法人 叡啓大学(えいけいだいがく)の学生は断然、後者だ。

「人と社会を前向きに変えるリーダー(チェンジ・リーダー)を育てたい」

   有信睦弘(ありのぶ・むつひろ)学長自身の信念ともあわさって、叡啓大学では、学生が主体的にワクワクしながら取り組んでいく、実践的なカリキュラムに力を入れている。

   なかでもユニークな授業が、企業・自治体が提供する、いま直面している「リアルな課題」を演習テーマとし、その「本質的な課題」や「解決策」を学生が自ら調べ、考え、議論し、プレゼン発表する「課題解決演習(PBL)」だ。関係者にとっても、新鮮な気づきを得られると評判がいい。

   教室で受ける講義だけが、学びではない。ときに大学を飛び出し、ステークホルダーを巻き込んで挑戦する、叡啓大学の実践的な学修スタイルはなぜ、これほど注目されているのだろうか。

  • 広島県公立大学法人 叡啓大学 有信睦弘学長
    広島県公立大学法人 叡啓大学 有信睦弘学長
  • 広島県公立大学法人 叡啓大学 有信睦弘学長

「こうあってほしい」と思う理想を思い描こう

   2021年に開学した叡啓大学は、ソーシャルシステムデザイン学部を設置する単科大学だ。ソーシャルシステムデザインとは、社会の課題を発見し、新たな価値をつくる(デザインする)ことを志向する。

   一言でいえば、「いまある社会を知る」よりも「これからの社会を前向きに変える」を学ぶ大学だ。なぜいま、それが必要なのか。有信睦弘学長は次のように語る。

「いま、社会は複雑になってきています。新型コロナによるパンデミックや、紛争など従来の常識から考えられない出来事が起こる一方で、たとえばSDGsの達成により持続可能でよりよい世の中に変えていこうとしています。
その変化の時代に必要なのは、『こうあってほしい』と思う社会の在り方(ソーシャルシステム)を自ら描き(デザインして)、実現させていくことだと私は思います。個人にひきつけていえば、自分の夢を形にする力が大切なのです」

   そこで叡啓大学では、「夢を形にする」ために必要な、土台となる「知識・スキル」をまず学ぶ(国際的な教養力(リベラルアーツ)、実践英語力、思考スキルなど)。すべての授業は、グループワークやディスカッションを積極的に取り入れている。

   さらに、「課題を解決する力」を養う実践的なカリキュラムに特色がある。身につけた知識やスキルを活かして取り組む「体験・実践プログラム」と「課題解決演習(PBL)」がそれだ(下記参照)。具体的には、どのようなものか。2人の学生に聞いた。

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「世界と日本をつなぐ架け橋になりたい――。この夢を叶えたいと叡啓大学に入学したのですが、今回のテーマは私の求めているものだなと思って参加しました」

   そう話すのは、「体験・実践プログラム」の一環で、総合旅客輸送サービスの「つばめ交通株式会社」のインターンシップに参加した、2年生の本田そらさんだ。

   本田さんは、インターンシップの求人票にあったテーマに惹かれたという。それは、訪日外国人旅行者のための観光案内資料をつくるというものだ。

◆外国人旅行者向け「観光案内づくり」を英語で...「国内インターンシップ」

本田そらさん。「完成した冊子はその後、商談に持っていかれたそうで『興味を持ってくれた人もいたよ』とおっしゃっていただき、うれしかったです!」
本田そらさん。「完成した冊子はその後、商談に持っていかれたそうで『興味を持ってくれた人もいたよ』とおっしゃっていただき、うれしかったです!」

   夏休み期間の12日間、本田さんは「出社」して、観光案内資料づくりに没頭。関係者にオンラインで調査をしたり、街へ出てヒアリングをしたりと、フィールドワークも大事にした。完成した全9ページの冊子は、広島県の魅力、歴史、見どころを英語で記載。タクシー等を使って移動する際の、おおよその予算感を示したところもポイントだ。

「自分の手でいちから観光案内資料を作る経験は、すごく楽しかったです。その際、私なりに顧客を想定――アメリカからいらっしゃる20~30代の2人組で、その場合の予算感、旅行に何を求めるか、悩みそうなポイントはどこかなどをイメージしました。そうすることで、より深い顧客ニーズに迫るとともに、広島県の観光にはどんな課題がありそうか、広い視野でとらえることができました」

   こうした思考の仕方、課題解決に向けた物事の進め方など、まさに叡啓大学での学びが実践されている。

叡啓大学ではふだんの授業でも、ある課題を解決するにはどうすればいいか考え、みんなとディスカッションしています。インターンシップでもそうした経験が活きましたし、社会に出たときの練習にもなっているなと感じます」

それは、解くべき本質的な課題なのか? 企業が「課題解決演習」に期待する理由

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   もうひとつの実践的なカリキュラム「課題解決演習(PBL)」では、企業・自治体が提供する、いま直面している「リアルな課題」を演習テーマとし、学生が自らその「本質的な課題」や「解決策」を追求する。

   企業・自治体が学生と連携するメリットについて、有信学長は次のように説明する。

「ビジネスの多くは『課題を解決する』ことの連続だと思いますが、案外、仕事に慣れてしまうと、限られた範囲のなかで考えられる課題を設定し、その解決に力を注いだはいいものの、実は解くべき課題ではなかった。解くべき本質的な課題は別のところにあった、ということがよくあります」

   だが、企業・自治体もその問題意識を持ちつつも、日々の仕事に手一杯だ。だからこそ、企業・自治体の「リアルな課題」に、学生が取り組む意義が出てくる。

「関係者のみなさんは、仕事や業界の知識を持たない学生が新鮮な目で見たら、本当に解くべき本質的な課題を見いだせるかもしれない、と期待してくださっています。思ってもいなかった着眼点から学生が課題を提起し、解決策を示す――それにうまく応える事例も増えてきました」

   その好例のひとつが「ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社」との取り組みだ。これに、3年生の藤本康平さんが半年かけて挑戦した。

   テーマは「ユニリーバのシャンプー等使用済空容器回収プログラムを広島県でどのように活性化させていくか」。

   今回の演習は、最初の3か月は個人で「課題の特定」を進め、続く3か月で4人がチームとなって「解決策の提案」をおこなう最終プレゼンに臨むことになった。

◆回収プログラムへの参加者、どうしたら増えるか?...「課題解決演習」

藤本康平さん。「叡啓大学では授業や試験でプレゼンをする機会が多いので、自然とプレゼン力が磨かれます。社会に出た時も役立つはず」
藤本康平さん。「叡啓大学では授業や試験でプレゼンをする機会が多いので、自然とプレゼン力が磨かれます。社会に出た時も役立つはず」

   まず藤本さんは、課題を特定するため、広島県内で回収プログラムの実施店舗を見つけ出し、足を運んで責任者に話を聞くことからスタートする。フィールドワークで情報を集め、分析し、仮説を検証し、本質的な課題に迫っていくのだ。

「もちろん1人でも課題の特定、解決策のアイデアは浮かびます。しかし、4人がチームを組んで意見をぶつけ合ううちに、複雑に絡み合った要因が整理され、解くべき課題がクリアになっていきました。
みんなと力を合わせると、自分で考え抜いた結論が変化し、より本質をとらえた課題が見えてくる――。課題解決演習のおもしろいところだと思います」

   藤本さんたちは、回収箱の設置だけにとどまりがちな現状から、解くべき「課題」を「プログラム参加へのハードルの高さ」と定める。その視点から、子育て世代をターゲットに、母親や子供が喜ぶメリットに着目した「解決策」を提案した。

   その名も、「ミライのデザイナープロジェクト」。子供が描いた絵で「オリジナルシャンプーボトル」をつくるワークショップを小学校で開催しよう、というものだ。

「製品を知る→使う→使い続けるきっかけになればと考えました。愛着のあるボトルであれば、詰め替えを利用したくなるし、小学校に回収箱を置くことで回収プログラムにも参加しやすくなるのでは、という意図を盛り込んでいます。
クライアントからの講評では『(解決策として)いい線をついている』『プレゼン力が高い』と評価されたことはうれしく、自信になりました」
課題解決演習(PBL)を通じて、「課題を解決する力」を養う
課題解決演習(PBL)を通じて、「課題を解決する力」を養う

   実は、今回の取り組みは、「ビジネス」と「パーパス(社会貢献)」の両立という、いま多くの企業が悩みを抱え、その実現が難しいテーマが下地となっている。だが、アイデア次第では、ステークホルダーも納得し、なによりもみんなが楽しめるやり方があることを藤本さんたちは証明してくれた。有信学長はこう話す。

「社会を前向きに変えるために、大事なのは好奇心です。叡啓大学では授業以外の活動でも、学生は『やりたい!』と思ったことをプロジェクト化して挑戦しています。それに教職員もサポートしています。みんなと協力することもまた、新たな価値を生むためには必要なことだと信じています」

   複雑な社会課題を解決し、新しい価値を生み出す――そのための確かな知識とスキル、マインドを持つ若者が広島県で育ちつつある。


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