ハラスメントだと感じる境界線は人によって異なる
――社員一人ひとりの意識として大事なことは?
川上さん 職場にいる誰しもがハラスメントの加害者にも被害者にもなる可能性があること。ハラスメントだと感じる境界線は人によって異なること。――こうしたことを全社員が認識しておく必要があります。冗談で言ったつもりの言葉がAさんにはウケて、Bさんにはハラスメントになる、ということは十分ありえることです。
――たとえば、いまの時代、部下を厳しく叱責することもはばかられることなのでしょうか。
川上さん パワハラになる可能性があるから厳しい叱責はNGかというと、そうとは限りません。重要なのは叱責の目的です。部下が同じ失敗をしないよう、あるいは部下の将来を考えて厳しいことも指摘するのは、上司として当然のことです。そんな教育的指導も、上司の役割のひとつだと言えます。
そして、部下の方に一方的な悪意でもない限り、100%部下にとっての利益を考えての言動は、想いが伝わるものです。言葉が拙くても、想いには言葉を超えて「伝わる力」があります。
問題になるケースの多くは、上司が自分の感情に任せて叱責してしまうことによって起きます。それは、表向きは「部下のため」と言いつつ、実態はただ感情を吐き出したいだけで、部下のためではなく自分のための行動でしかありません。この点には十分気を付けたほうがいいでしょう。
――感情任せの叱責ではないのに、それでも上司の振る舞いに部下が誤解してしまう場合はどうしたら?
川上さん 上司側がアプローチの仕方を変えない限り、部下の耳に言葉が届かなくなってしまいます。部下の方はハラスメントだと受け止めているため、感情の壁ができてしまっているからです。
ただ、上司にパワハラ/セクハラなどのつもりが全くなければ、素直にアプローチの仕方を変えられないかもしれません。その場合、上司は、自分の上司や他の社員など第三者にどう見えているかを確認するなどして、自分の振る舞いを客観的に把握することが第一歩となります。