ハラスメントのある職場は「いい人間関係」がない
――ハラハラが起こりやすいのは、どういったシチュエーション、あるいは職場環境でしょうか。
川上さん ハラハラに限らず、あらゆるハラスメントは日々のコミュニケーションの状態が如実に反映されるものです。
たとえば、仕事でミスをした時に上司から、「何やってんだ、アホ」などと言われたら、ショックを受ける人が多いかもしれません。しかし、その言葉の良し悪しは別として、上司とは日ごろから冗談を言い合う仲で、お互いに「アホだ」「バカだ」とキツイ言葉を交わしても、笑っていられる関係性が構築されていれば、何とも思わない言葉ととらえられます。
――たしかに、その言葉を発するトーン、ニュアンスも関係しそうです。
川上さん つまり、こういうことがいえるでしょう。――ハラスメントが指摘される職場は、そもそもあまりいい人間関係が構築されている状態ではない、ということです。
順序としては、ハラスメントが起きることによって職場に悪影響があるというよりは、その逆で、職場がいい状態ではないからハラスメントに該当する行為が起きてしまう、ということになります。ハラハラもしかりです。
そこに、「パワハラだ!」「あれはパワハラじゃない。逆にハラハラだ」と応酬が繰り広げられるようになれば、どちらの言い分が正しいかどうかの前に感情的な溝が深くなる。それにより、職場環境はより悪化してしまうのではないでしょうか。
――たとえば、上司側はパワハラ/セクハラのつもりは全くないのに、部下側がそう受け止めてしまうケースは起こり得ると思います。そうならないために、どのような予防策が必要でしょうか。
川上さん ハラスメントは飽くまで主観的な概念なだけに、代表的なケースを事例として挙げることはできても、実際は受け手側の感じ方によって異なるため該当基準は曖昧です。
予防策としては、ハラスメントに該当しやすいさまざまなケースを会社が研修などで学ばせることもひとつだと思います。もっとも、なによりも職場の雰囲気をいい状態に保っておくことが大前提になります。
そうすれば、ハラスメントしているつもりはない振る舞いなのに、ハラスメントだと受け止められてしまう可能性を減らすことができるからです。