2023年は、さまざまなハラスメントやいじめがクローズアップされた年だった。職場に目を向けると、代表的なセクハラ、パワハラ、マタハラ、就活ハラスメントなどにくわえて、いま、「ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)」が問題となりつつある。
これは、過剰にハラスメントを指摘する行為、それ自体をハラスメントだと見なすこと。たとえば、上司の注意や指導に対して、部下が「それはハラスメントだ」と反論し、従わないケースなどが該当する。
ハラスメントの線引きとは。上司は部下とどう向き合えばよいか。雇用労働問題に詳しい、ワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
ハラハラは、ハラスメント意識の高まりに対する反作用
――相手を不快にするさまざまなハラスメントが問題視されているなか、社員も声を上げやすい環境もあるからか、「ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)」という問題が生じています。あらためて、ハラハラについて教えてください。
川上敬太郎さん ハラハラとは、相手の振る舞いが正当なものであっても、自分が不快に感じたら、「ハラスメント」だと言い立てて過剰に反応し、嫌がらせする行為をいいます。
たとえば、寝坊など明らかに本人に責任がある理由で遅刻して周囲に迷惑をかけ上司から注意を受けた。その際、とくだん厳しい言われ方をされたわけでもないのに、上司に反撃したい一心で「パワハラだ!」と訴えるようなケースなどが当てはまります。
――言葉としては、いつごろからあったものでしょうか。
川上さん ハラハラという言葉をよく目にするようになったのはここ数年のことです。ただ、十年ほど前にはすでに、「何でもかんでもハラスメントと騒ぐのはおかしい。それではハラスメント・ハラスメントだ」とハラスメントを過剰に問題視する風潮に反発する声は見られました。
――そうした経緯があったのですね。
川上さん ハラハラ社員は、必然的に今後も増えていくと思います。なぜならハラハラは、ハラスメント意識の高まりに対する反作用だからです。
パワハラやセクハラなど、ハラスメントが職場で問題視されるようになればなるほど、加害者側も被害者側も敏感になり、「パワハラだ!」「あれはパワハラじゃない。逆にハラハラだ」と、言葉遊びのようにも見えてしまうような応酬が繰り広げられる場面が、起きやすくなると考えられます。