「マナーは思いやりの気持ちを表すもの」
茶碗にご飯粒を残さない方が良いのか――。西出さんは「日本では、その方が良いと思う人が多いでしょう」とした上で、「国などよってその考え方は異なるため、答えは一つではない」と断じる。日本ではきれいに食べ終えることで「食事を食べ終わりました」という意味になる文化や考え方がある一方、中国では提供された食事を残すほうが良いとされているという。
「他の国では違う考え方もあるから、一概に『これはダメ』と決めつけるのはもったいないかなと思います。マナーは決めつけられるものではなく、自分で選択していかないといけません」
マナーは相手の立場に立つことだと強調する西出さんは、米を作る人や皿を洗う人などの立場に立って考えてみれば、茶碗にご飯粒を残さない方が良いと、日本では言えるとの見解を示しつつも、「そのように出来ない理由のある人もいるでしょう」として、それは決まり事と言い切れないとも述べる。
「マナーは決まり事ではなく、相手の立場に立ってお互いがハッピーになるために存在します。英語の『マナー』は、日本語に訳せば礼儀という言葉になります。漢字の『礼』は思いやり、『儀』は型を指します。マナー=礼儀とは思いやりの心を形に表すものですが、型を重視すれば、それは儀礼になってしまうんですね」
自分が不快感を覚える食べ方をする人とはどう接するべきか。西出さんは自分とは異なる人に疑問を抱いたときにコミュニケーションを取る重要性を訴える。お互いに理由が分かれば、「それならいいか」と受け止めたり、相手が傷つかないようにクッション言葉を使って伝えたりすることができると説明した。
「ご飯粒を残すことに不快感を抱くことは、それはそれでいいんです。でもいろいろな相手がいます。不快に思う人もいれば、不快に思わない人もいる。マナーは思いやりの気持ちを表すものなので、相手に応じて答えが変わるのです」