都の条例違反は親告罪でなく、警察が独自に捜査できるが...
とはいえ、少年時代の被害者らが警察に相談するには、あまりにもハードルが高すぎることが取材などから分かってきている。正木弁護士は、強制わいせつ罪は、17年まで親告罪(改正前刑法第180条1項)だったため、「被害者の申告がない状態では、捜査機関が立件することはできません」と指摘した。
その一方で、都の青少年健全育成条例の淫行罪などについて、「条例違反は親告罪ではありませんから、理論上は被害親告がなくても捜査機関において立件可能です。したがって、告訴がなくても警察が独自に捜査することができます」と述べた。
「こういったセンシティブな犯罪は、一人が声を上げることで被害者みんなが声を上げやすくなります。事件が一つ明るみに出ることで、他の事件の被害者も声を上げやすくなることはあるでしょう。そのため、非親告罪である条例違反の立件を端緒にして親告罪である強制わいせつ罪等の被害者も告訴を行って立件できた可能性はあります」
いずれにせよ、警察は、被害者の協力を得ることが必要だったと正木弁護士は強調した。
「捜査するにも捜査機関においてある程度『犯罪があった』という確証が必要です。とりわけこういったセンシティブな犯罪においては、写真や映像等のはっきりした証拠が残っているのでなければ、被害者のお話しというものが極めて重要になってきます。被害者が幼くて自分で話せなければ保護者が代わって話したりすることもありはしますが、いずれにせよ、親告罪の場合とほとんど同じような被害申告が必要になってくるでしょう」
そのうえで、次のように締め括った。
「喜多川氏の性加害の被害者の方々が今日まで声をあげなかったことは、全く責められることではありません。むしろ今声をあげていることは、本当に賞賛されるべき勇気のあることです。被害者の方々が十分に納得される形で早期に事件が解決することを強く期待します」